あやし野ビデオ館

怖い映画をご紹介しています

モキュメンタリー沼 第1章4節 ビデオテープという柔さ

①ドキュメンタリー系 「ほんとにあった!呪いのビデオ」円熟期編



2023年1月、ついにシリーズは99巻を突破、名実ともに『心霊ドキュメンタリーの金字塔』達成へのカウントダウンが始まった今日この頃。
今回は前述の児玉和土監督のセオリーを継承し且つ完成させた岩澤宏樹氏、菊池宣秀氏、演出補として活躍した(後に監督も)川居尚美氏による円熟期。
岩澤宏樹氏は42~55巻(全14巻)を担当、顔出しNGの児玉監督の真逆で顔出し&現場主義。
体を張ったゲリラ取材も多く、感情的高圧的な煽り話法で取材対象を追い込みネタを取る強引さと同時に、助手的立場だった菊池氏を大いに頼る側面もあった。
菊池宣秀氏は56~70巻(全15巻)を担当、良くも悪くも冷静沈着なポーカーフェイス。演出補時代は奇抜なアイデアで目を引いたが、監督就任後はコンプラ的気遣いも有り、実証や取材を重ねて人情論で落とす穏健派。また終盤、感服せざるを得ない作品もあり、裏方にしておくのは惜しい人材。
また真偽はさておき両者とも本シリーズの取材対象としても大いに弄られた経緯がある。
岩澤氏は前述の霊障や取材先での暴行被害等々、菊池氏は32~34巻の「Twenty Seven」に於いて数十年に渡る因縁を抱えた挙句の失踪、入院、記憶喪失、その後の”修業のため”の離脱等々、本シリーズの1ユーザー始まりとはとても思えない稀有な経歴の持ち主である。
またこの時期、画的にかなり怖ろしい作品が多いのも興味深いところで、本シリーズの他、派生や類似品など見倒す中で、コレに当たった瞬間ほどファンでよかったと思わずにいられない『画的マックス系』をご紹介しよう。(文中敬称略)

 

●「50巻」「不気味な置物」

・発端は、2011年の震災で破損した投稿者の千葉の実家の蔵から出てきた父親の遺品の8㎜テープ。父の筆跡で『1990年5月』とあり、置き物の人形を定点カメラで撮影した動画だった。
その置き物は陶器のアンティーク人形で、左腕に小さな人形の胴体を抱き、右手にその首持っている不吉なモノ。投稿者が幼い頃、家に飾ってあったそうだが現在は所在不明。
またその日付は取材時には「父親が不慮の事故で亡くなった1ヶ月前」と証言するが、後に「深夜線路内に侵入し電車に撥ねられた」と訂正され、小さな人形と同様、首が切断されていたそうだ。
問題映像は数時間の尺があり、早送りでしか判別できないほどゆっくりと、あどけない少女人形の眼が動き、口元が歪んで下卑た笑いが浮かびあがるモノだった…。
ちなみにこの巻は製作委員会発足から13年という節目だったためか「時を越えた怪異」が多く取り上げられている。「降旗祐介が亡くなりました」という謎の手紙から始まり、シリーズの祖であり現在もナレーションを務める中村義洋監督も深く関わった「13年の呪い」、アイヌ民族差別の闇に触れ現地取材を決行した「アフンルパロを視る女」など興味深い作品も多い。

 

●「52巻」「続・不気味な置物」

・その続報は巻跨ぎの52巻。投稿者が親戚の集まりで事情を打ち明けたところ、伯父(父親の弟)が、父親が亡くなる1ヶ月ほど前に預かった事を思い出す。父親はそれを『友人の形見』だと言い段ボールで持ち込んだそうだが、物置に仕舞ったきり失念していたのだとか。
スタッフルームに段ボールごと持ち込まれたその置き物は、台座含めて40㎝ほどの大振りなモノで、淡くくすんだ色彩が見事な陶器人形だったが、抱いていた小さな人形の胴体は無く、右手に持った首だけが残っている。
また箱から見つかった第2の8㎜テープには、前回の続きの映像が録画されていたが、投稿者と母親、伯父は第2のテープの内容は見ていない。
その内容は、人形の顔がさらに醜く歪んでいき、下卑た嗤いを浮かべた口元がさらに歪んで耳まで裂け、眼はつり上がり、まさに悪鬼の如く変化したのだ。また取材後、映像が途切れる直前に気だるい声で「わたしをみたら おしまい(私を見たらお終い)」という音声が確認され、最終的に懇意の神社に預ける事に。
投稿者はなぜ、当初父親の死因を明かさなかったのか、彼女や母親、伯父(父親の弟)などの親戚含めなぜ父親の死や関連する出来事を『失念』していたのか、そして父親の『友人』とは誰を指すのか、投稿者らは第2のテープを見ていないため命拾いしたと解釈していいものなのか…。彼女が穏やかで健全そうなお嬢さんだった事もまた印象深いエピソードとなっている。
またこの巻は2013年6月にリリースされたモノだが、とある湖ではしゃぐ大学生らの映像に映り込んだ不気味な映像「奇怪な未来」が、その3年後2016年6月リリースの67巻の「奇怪な過去」で実証されるというタイムリープが起きている。もちろん信じる信じないはあなた次第だが、映像は不気味で不吉だし、ほんの数年前、湖ではしゃいでいたパーティーピーポーがこんな事にという衝撃も色んな意味で滋味深い。

 

●「51巻」「溶怪」

渋谷センター街。同僚との飲み会で泥酔した投稿者小野寺は、独りで知らない飲み屋に入り出会った女性とラブホに行くがその先の記憶が無く、女性の記憶も曖昧でポケットにはホテルの名入りライター、スマホには撮った覚えのない不気味な動画(=問題映像)が入っていたのだとか。
当初の取材でそう語った小野寺の裏付け取材では、彼の同僚の遠藤から「センター街で女連れの小野寺を見たが本人に否定された」「会社の内線で電話をした人事の女性が女の声を聞いたが、周囲が無音で不気味だった」等々の証言を得て本人に確認するも、女の存在は完全否定し「報告するまでもないと思った」などとはぐらかされる。
またホテルは実在したが滞在の確認は取れず、問題の店も見つからず、女の正体も分らない。
問題映像は、ベッドにうつ伏せになった女の顔を捉えたスマホ動画で、眉無しノーメイクの女が瞬きもせずじっとカメラを見つめ、徐々に腐敗し溶け落ちて行くかのような不気味なモノで、途中生きている証しのように一度だけ、気だるく瞬きをするのも凄まじく恐ろしい画になっている。
また後日、当該ホテルの清掃バイトから「『203号室』は不気味で、カップルが入っても出て行くのは男だけ。デリヘル嬢の霊ではと噂されている」という証言を得て「小野寺が(女の霊に)取り憑かれているのでは?」と疑念を抱き、菊池の提案で2日間ホテルで定点観察する実証実験を行うが、検証2日目に小野寺が出掛けたきり失踪して騒ぎとなり、責任を感じた菊池が退職する結果に。
後の検証で、菊池のサブカメラで捉えた小野寺の最後の映像に、彼の背後に白いコートに長い黒髪の女の姿が映り込んでいた事が判明する。
人体が腐乱し溶け崩れていくような問題映像がなにより衝撃的だが、いわゆる『悪霊』と化したであろう女の悲劇が透けて見えるようななんとも後味の悪いエピでもある。
他にも、深夜の山間で旅館の思い出帳にあった「ゆうれいいるばしょ」の絵地図に誘われた釣り客が目撃する「空中楼閣」、海岸縁の廃墟に佇む寂しげな魍魎の囁き「むげねぇ…」、狐狸妖怪っぽい和服美人の後ろ姿が映り込む「古本屋」、化けトンドッキリ系の「夜警」、奇しくも開かずの部屋の隣人となってしまった投稿者の恐怖体験「ベッドの下 開かずの部屋」、ゴミを持ち去る男との丁々発止のやり取りが怖い「悪戯」等々、どれも卒なく楽しめる充実した巻となっている。
 
■合せておススメ

 

●「死画像」

「ほん呪」シリーズ外だが、界隈でたびたび見かけて視聴したものの「私は一体 何を見せられてるのか…」と混乱しまくった、コレ系マニア御用達アムモ98製作作品。
「『Not Found』×『ほんとにあった! 呪いのビデオ』のスタッフが結集!」としながらもほぼ制作陣非公開の謎作で、パケ画も秀逸だし気合も入ってるんだが…。
①『錯視霊』深夜、廃校となった母校に侵入したOB2人が、在学当時に聞いた「焼身自殺した美術部の女子生徒」という学校怪談を体験するハメに…。この奇抜な画トリック、キライじゃ無い。
②『死の報告者』自主映画の顔合わせ中に乱入した異様に怯える男。男は席を外していた助監督の死を予言し、映像にも不気味な異変が起きており、助監督の映像にはさらに不可思議な事象が映り込んでいて…。
③投稿者が廃墟で拾った古いビデオテープに入っていた『心霊テスト』という不気味映像。それは診察室に後ろ向きで座る和服の女の映像で、ダビングするたびに女が振り向いて行き…。みんな大好き「変化する系」。
④『歌声』毎夜深夜1時、アパートの前を歌いながら通り過ぎる中年男(らしき声)に向かって「ヘタクソ!」とツッコんでみた2人が遭遇したものとは…。ハンディとスマホカメラ2台使いの匠。
⑤『貫通』ビデオカメラの試し撮りではしゃぐ彼氏が、同棲中で部屋主の彼女に這い寄る不気味な影に気づいてパニクり、彼女を見捨ててバスルームに立てこもった結果彼女は昏倒して救急搬送され大激怒。さらにはそれを無断で投稿し…。
⑥『クニコ』投稿者若宮が同窓会で「3組のクニコちゃんが亡くなった」という会話を聞いて、妙に気になり卒アルを見たが見つからず、代わりに「クニコ」という手書きラベルのビデオを見つけるが心当たりが無い。
ところが母親には、幼い頃亡くなった彼女の弟が死に際「『クニコちゃん…』と何度も呟いていた」と言われ、ふと幼い頃近所によく遊んでくれた”お姉さん”がいて、弟が死ぬ少し前に遊びに行った際、その父親から「アニメのテープだよ」と言われて件のテープをもらった事を思い出すが、”お姉さん”の名前は思い出せない。
また「最近スマホに『クニコだよ…忘れないで…』という留守電が入ってた」と打ち明け「弟はこのビデオを見たから死んだのでは?」とも。その取材直後、若宮は精神病院に入院したため真偽のほどは定かではないそうだが…。
問題映像は「”及川くに子(14歳)”が3年以上行方不明」という古いニュース映像で始まるが、その後延々とエラー画面が続き…。

一見、POV風ドラマのオムニバスで、俳優陣やVFX、脚本や見せ方もハイレベルな心霊エンタメだが、問題は最終話の『クニコ』。11分超(計ったw)のエラー画面に全集中し、なにかSpecialな仕掛けがあるのか、何を言わんとしてるのかを考えさせられる謎多き作品なんだが、
71分作品の うち11分超がいわば”砂嵐”、TVなら放送事故レベルのこの怖さがお分かり頂けるだろうか?
頑なに大真面目に5話まで作ったところで「うちが欲しいのはこんなじゃねーんだよ!マジメかぁ?!w」と嘲られブチ切れたとか、スタッフが想像を絶する災難に見舞われやむなく制作途中だった『クニコ』で帳尻合わせをしたとか…中でもパケ画は、見てはいけないモノをムリクリ見せられてるような罪悪感に苛まされる禍々しさだし、もしやこれこそがホラーギョーカイの闇…はたまたガチで呪… …そんな事をアレコレ想像させてくれる作品かと。
ちなみに某送付式レンタル盤で見たんだが…送付式にも拘らずなぜか臭かったんだ、臭い移りするくらい強烈に。某レンタル店バイト経験者によれば 店舗ではそういうコトが間々あるらしく都度対応処理しているらしいのだが…信じる信じないはあなた次第だけれども。

 

●「テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?」

 
2022年12月末にBSテレ東で初配信され、界隈で話題になった全3話。
いとうせいこう氏と女子2名が、7~80年代に録画された深夜の成人向けバラエティ番組のビデオを見てあれこれツッコむ趣向のモキュで、なにより番組内で取り上げられる”視聴者投稿のビデオ映像”の異常さ異様さが凄まじ過ぎる掘り出し物。
確かに『投稿映像』の不穏さグロさはハイレベルだし加工技術の進化には敬服するが、「その時代はコンプラガン無視でハラしたい放題(笑)」が制作意図らしく、女子イジリ喫煙グロ画像等々あえて踏んでくる性質の悪いおっさん的モノマネだ!とオコ気味w ただその分話題性はあるので、配信等々で見かけたらお試しあれ。但し虫(食)が苦手な方、コンプラが気になる方はガチで閲覧注意。

 

 

TSUTAYADISCAS TSUTAYADISCAS

 
 
・現在、TSUTAYA DISCASでは本編に加えSpecial、VerX、Best版等々の番外編を含めたほぼ全作が未だレンタル可能なのでぜひ。
当方ビデオ時代からのファンなので、制作会社推しのB~Z級の怪作や韓流ドラマ等々の予告編、チャプターや冒頭の警告テロップのパターンや凡ミス探し、映像には登場しない製作陣、報奨金額の編纂等々の徹底チェックが可能な盤こそがおススメかと。信じるか信じないかはあなた次第だが。