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モキュメンタリー沼 第1章6節 モキュに正義はあるのか?

①ドキュメンタリー系 「ほんとにあった!呪いのビデオ」とっておき編

2023年7月現在、ついにシリーズは100巻を突破、肝心の『100巻』は始祖である中村義洋監督による劇場版で2023年8月公開、その間もシリーズは走り続け、同8月には102巻がリリース予定だそう。
という事で今回は、ほん呪の最後の砦=菊池宣秀監督のとっておきをご紹介しよう。
彼は自身が調査対象となった演出補時代の32巻「Twenty Seven」(児玉和土監督)が印象的だが、監督就任後は当たりがソフトでコンプラ的気遣いもあり、60巻「蛭子」(後編)や69巻「ひな人形」では怪しげな洞窟に自ら突する冒険好きな一面も見受けられる。
その担当巻は最長の児玉和土監督に次ぐ全15巻。
32巻「Twenty Seven」では『元投稿者』、自らの奇異な体験や当時継続中だった不吉な送り付けの度重なる調査依頼が、本シリーズのスタッフとして起用されるきっかけだったとされているが、その後裏方として残る気概もシリーズへの想いと受け取るのは希望的過ぎるだろうか。
シリーズ初期を支えたのは「友人の遺品(傷ましい問題映像)」や「(病んだ)本人には言えない事実(問題映像)」等々をあえて取り上げ、時には風化した我が国の黒歴史にまで大風呂敷を拡げる社会派の勇。
「僕らは真実を知りたいだけですよ!話してくださいよ!」と迫るのは岩澤監督流。
「じゃあ…みんなで祈ろうか」取材終了後、花を供え手を合わせるのが菊池監督流。
落書きだらけの廃墟廃村等々で無惨に朽ち果てた位牌や遺影、幸福だった頃の記念写真。その死生観、侘寂…それはナニモノにも替えがたいこのシリーズこその妙味であり、ある意味感動だったと言い切りたい。
 
またこんなにも後付けで申し訳ないが、この妙味はテキストだけではけして伝わらない、『画ヅラ』『問題映像/事象』とスタッフ及び対象者の『リアクション』こそが肝という熱き思いから思いっきりバレさせて頂いている。
出来れば少し暗い部屋のTV画面で、囁き声や唸り声…それが果たして何と言っているのか、それを出来うる限り聞き取るためにもイヤホンなどでの視聴をおススメする。
ちなみに既巻の大半見た中で、なぜか完全スルーされてる現象も間々見受けられ、そのたび「(仕込みスタッフの)映り込みじゃね?」「偶然物が落ちただけ?」等々盛り上がるのも一興かと。その『新たな気づき』を投稿するなどして採用されたらめっけもんなので健闘を祈りたい。
また本項に登場する風習に関しては、作品内の表現を元に作成しているので諸々悪しからずご了承願いたい。 (文中敬称略)

 

●「67巻」「禁忌-前編-」「奇怪な過去」

・「禁忌-前編-」
始まりは都内在住の若い保険外交員女性=戸松の投稿映像。
それは同僚女性八幡のアパートでの宅飲み女子会の際、八幡の背後の襖が開き、不気味な人影が這い出て彼女に手を伸ばすモノで、念仏のような声も混入していた。
だが八幡はその日を境に欠勤し「誰かに見られてる」と怯え、部屋の隙間を塞いで引き籠っているため、調査して欲しいとの依頼だった。
スタッフは現地で2人に会うが、戸松は本気で心配しているようで、八幡も早く復職したいと焦っているようだ。
またアパートの住人からは「八幡の留守中、婚約者と名乗る男が来て部屋をじっと見ていた」「普通の男だが、顔が全く思い出せない」との証言が。
しかし八幡には兄弟や親しい男性すらおらず、演出補の川居も「問題映像に異様な嫌悪感を感じる」と証言した事からストーカー疑惑が浮上。
一方、スタッフは八幡の美大時代の先輩石川から、写真家下村から「モデルを探している」と頼まれ、八幡のプロフと顔写真を送付した事実を聞く。
モデルの条件は『清らかで慎ましい処女』という前時代的なモノで、大学時代浮いた噂も無く付き合いも悪かった彼女を思い出し「(本人の了承を得ぬまま)軽い気持ちで送った。下村から特に連絡が無かったため忘れていた」と言うのだ。
スタッフは早速下村に電話を入れるが、八幡の名を聞くなり切られてしまい音信不通となる。
川居は石川の非常識な行為に憤慨、皆が「その写真家が”処女”に執着するあまりストーカー化したのでは?」と疑念を抱き始めた直後、八幡がアパート近くの山林で首を吊り、意識不明の重体との報が入り、愕然とする事に。(「禁忌-中編-」に続く)

 

・「奇怪な過去」 
湖で盛り上がる大学生らの映像に不気味な首吊りシーンが混入していた52巻の「奇怪な未来」の”答え合わせ”的続報。
問題映像の"未来"では、日付が『2015年7月16日』に変化していたため、スタッフは投稿者柴崎に結果報告の依頼をしたが音信不通となっていた。
*予言日の1週間前、7月9日。
柴崎の従妹の角井から「柴崎が失踪した」との連絡があり、柴崎の自宅マンションへ。
「奇怪な未来」の取材後、柴崎は角井に全てを打ち明け、同時期「縊死する映像」は「地面に倒れて血を流す映像」に変化したため、怯えた彼は占い師を頼り「先祖からの良い警告だから回避するよう」助言され、現在のマンションに転居したのだとか。
ところがその後 退職して引きこもり、取り憑かれたように託児施設での虐待や事故などの事件記事を調べていたのが、彼を見た最後だったそう。
スタッフは角井から彼のスクラップブックと部屋にあった「かりてい」か「かいてい」と書かれた古いビデオテープを預かり調査する事に。
*予言日の4日前、7月12日。
柴崎の姉が「切抜きの中に、柴崎姉弟が幼い頃預けられた託児所の事件記事があった」と証言。
それは施設で起こった児童虐待容疑事件で、実は柴崎自身もすべり台から落ちて大ケガを負い、以来「お婆ちゃんが怖いから行きたくない」と言い登園拒否になったのだとか。
また卒園後、近所の戸塚さん宅に預けられるようになり、ある日、戸塚さんに「お婆ちゃんが迎えに来た」と言われ、不審に思った姉が見に行くと見ず知らずの老婆だった事があったとも。
その後戸塚さんは病死、夫は失踪。また戦後の食糧難の時代、その託児所周辺では若い後妻が夫の連れ子を殺害し、家族にヤギの肉と偽り食わていた猟奇事件が発生していた事が判明する。
*予言日の翌日、7月17日。
柴崎の姉から「柴崎がビルから飛び降りて亡くなった」との報が入る。現場は奇しくも、柴崎姉弟が通っていた託児所の跡地だったのだとか。
「かりてい」のビデオに入っていたのは、奈落のように真っ暗な階段から蠢きながら這い上がってくる黒い人影と、古い託児所のような和室でベビーベッドにもたれて動かない3人の児童の一人を、ベッドの下から出た何本もの黒い手が出てひきこもうとする不気味な映像だった。

 

この「禁忌(前編)」は怖さというより、まず登場人物の相関関係等々をご記憶願いたい。
また八幡の先輩石川のインタビュー映像には、ビミョーに「学内コンパで八幡にスルーされた腹いせ」っぽいニュアンスが。それは川居でなくともかなりの胸糞案件かと。
「奇怪な過去」は、問題映像はソレっぽくかなり怖いが「(その後)変化した映像」も柴崎本人の証言映像も無い不確実なエピだが、52巻の陽キャから一転、たった数年で奈落の底に突き落とされる恐怖、何より託児所の謎の転落事故後「知らないお婆ちゃんが迎えに来る」って超怖くないすか?^^;
小品では、軍需工場の集団自決を追体験させられる「ロッククライミング」、亡くなった女児が映り込む「合唱」、なぜか人一人分閉まらない「シリーズ監視カメラ 『扉』」、地元のヤンキーにいびり殺された女ホームレスの悲劇「人形焼」等々逸話が重めなので気分が落ちてる時には閲覧注意。

 

●「68巻」「禁忌-中編-」

・「禁忌-中編-」
前67巻「禁忌-前編-」で自殺未遂した八幡は昏睡状態が続いている。
そこでスタッフは過去の投稿映像から八幡と似たケースを発見、投稿者の中国人留学生雀から事情を聞く事に。
それは彼女が親友の周と行った万里の長城での観光動画で、同じく黒い人影と念仏のような音声が映り込み、周は直後に工場の爆発事故に巻き込まれて死亡(焼死)したというのだ。
ただ周の場合、以前ストーカー被害に遭っており、加害男は撮影日直前に自宅の火事で焼死、つまり周は加害男と同じ死に方をし、遺体も盗掘され未だ行方不明なのだとか。
スタッフは、当時の中国で『冥婚』用に遺体の盗掘や売買事件が多発している記事を発見。
『冥婚』とは、未婚で亡くなった男女の婚姻を挙げ成仏を願う儀式なのだが、中国では「同じ死に方」が条件のため、条件に合う遺体の盗掘や売買が行われていたそうで、周も何らかの呪法により行くはずも無い工場に誘導され(加害男と同じ)焼死したのでは?という疑惑があった。
 
一方、日本にも『冥婚』にあたる『ムカサリ絵馬』という風習があるそうで。
それは本来、画(絵馬)や人形、(偽)写真等々を用いた、つまりは死者と架空人型の婚姻であり、生者との婚姻は、生者があの世に引きずり込まれるため『禁忌』とされていると。
その解説をした民俗学研究家の知り合いの儀式コレクターから、その『特殊な冥婚』の儀式動画を入手する手はずに。
 
スタッフは八幡の写真が無断で『特殊な冥婚』に使われたと確信し、写真家下村を待ち伏せして説得し、事情を聞く事に。
下村はブライダル等々の写真家で、その『清らかで慎ましい処女』という奇妙な依頼を軽い気持ちで請け、近所の花屋の店員の写真を合成して納品したところ却下され店員も大ケガを負ったため、ただ事ではないと気づいて石川に依頼。
秘密裏に入手した八幡の写真を合成して納品した結果、無事報酬が支払われホッとしたのも束の間、スタッフから連絡があり逃げ回っていたようだ。
彼は「依頼者は『平塚和弘』」と打ち明け、納品先住所とメアドを白状し、後日合成写真の相手男性の写真が届くが、アパートの住民の証言通り妙な違和感のある無表情な人物写真であった。

 

その後、問題の『特殊な冥婚』の儀式動画が届き、警告カウントダウンの後に紹介される。
それは古く荒れた動画で、日本間の床の間の前に紋付袴の新郎、その横に白無垢に綿帽子を目深にかぶった新婦が座し、新郎の横には祭壇の様なモノがあり、新郎は大きな箱にもたれてそっぽを向いたまま動かず、生気が感じられない。
そこに介添え役の黒紋付の女が現れ儀式が始まるが、新婦のみが三々九度の盃を受け、祭壇と新郎に向かって丁寧な座礼をするが、新郎はそっぽを向いたまま微動だにしない。
黒紋付の女は気にする様子も無く、2人の正面に坐して祝詞を挙げるが、間もなく周囲に人影が数体浮かび上がり、同時に新婦が頽れて動かなくなる。 女はそれをも無視して平然と祝詞を続け、黒い影は数体に増えて揺らめき、ノイズと共に動画が途切れる。

 

呪われるとか祟りとかそんな問題じゃない、明らかな禁忌外法の記録映像…と思しきナニカ。
初見の瞬間、今でこそ一般的な白無垢綿帽子の花嫁衣裳だが、かつては家柄や格式が問われる高貴なしつらえだった事をふと思い出してしまい。
仮にこれがガチの記録映像だとするならば、この新郎は死体であり、新婦は何らかの事情を抱え、それを承知の上で「嫁ぐ」=「あの世に引きずり込まれる」=「死ぬ」覚悟を決めた女性であると。
また介添えの女も(新郎側の)親族を示す五つ紋の最正装で、生気のない新郎がそっぽを向いていようが新婦が昏倒しようがお構い無しに、凛としてたった一人で儀式を完遂する気丈さも気にかかる。
一方、この解説をした”民族研究家”は電話取材のみ、更にその”知り合い”の”コレクター”ともなればなんの保証も無いわけだが、この画はなんだ。
そのこの上なく不穏でうすら寒い不確かなリアリティは、このエピの最終章で最高値を叩きだす事に。
小品では、バイト先の忘れモノ「置き傘」、アスレチック公園で遊ぶ女児を愛おしげに見つめる傷痍軍人「花束」、東北の廃ホテルでの怪異「ホテル」など”そう来るか”系が多い気が。

 

●「69巻」「禁忌-後編-」

・「禁忌-後編-」
67巻「禁忌-前編-」のラストで自殺未遂した八幡は昏睡状態が続いている。
スタッフは彼女の写真が『特殊な冥婚』に用いられ、現在も依頼主『平塚和弘』が所持していると考え、下村の情報からその自宅を訪ねるが、母親と思しき老婆に「(和弘は)家にいるが、”お兄ちゃん”の事は分からない」と言われ拒否される。
近隣では「60過ぎの母親と息子の2人暮らしだが、息子は見た事が無い」「時折念仏のような声が聞こえる」等々の情報を得る中、ついに一家の事情を知る池内を探し当て話を聞く事に。
池内は次男明生の小学時代の同級生で、当時平塚家は母親と長男和弘、次男明生の3人家族だったと。ただ和弘は学校でも見た事が無く”引きこもり”の噂もあったが、平塚家に遊びに行った際「(和弘は)病気で寝てる」と言われたので、病身だからと理解したと。
また彼自身、間もなく引っ越して音信不通となり、3年前、風の便りで次男明生が事故死したと聞き、気になっていたそう。
 
スタッフは、下村とのやり取りがメールで依頼主が兄和弘だったことから、病身の兄が、早逝した弟の『(特殊な)ムカサリ婚』を思いついたと考え、池内に件の男性の写真を見せたところ「明生の面影はあるが本人かどうかは分らない」と言われてしまう。
どちらにしても八幡を救うには、その「儀式を中断させる」=「八幡の顔写真を合成した『ムカサリ写真』を奪還する」以外手立ては無いと考えたスタッフは、池内に「明生の焼香に訪れた元同級生(1人はスタッフ=森澤透馬)」の体で平塚家の捜査協力を依頼。
池内が老母を引き留める間にスタッフが室内を捜索、兄和弘から『ムカサリ写真』を奪還するゲリラ取材を敢行する事に。

 

決行当日夜半、老母が池内に気を許し、池内と森澤は1階の仏間に通され、侵入に成功する。
仏壇には、弟明生の制服姿の遺影はあるが、肝心のムカサリ写真は見当たらない。
そこで池内が老母が持ち出した卒アルの思い出話で引き止める間、森澤がトイレ拝借を理由に探索に出る。
屋内は暗く老母以外の気配も無く、2階には昭和っぽい玩具等々の物置、クリーニング済みのスーツがある空き部屋等々があるが、年若い息子が同居している様子はない。
しかし入口の部屋に踏み込んだ森澤は、真っ暗な部屋で一人学習机に座っている人影にぎょっとして思わず小声で声をかける羽目に。
ただよくよく見るとそれは目鼻が雑に描かれ衣服を着せられた等身大の不気味な手作り人形で、本棚には八幡と和弘の名が入った婚礼写真=『ムカサリ写真』が飾られていた。
あまりの異様さに狼狽える森澤の元に、池内から「老母が2階に向かった」旨のLINEが届く。
が、気づけば廊下に妙な様子の老母がいて、彼の無礼を責めるでもなくずいと人形に歩み寄ってその肩に触れ「ヒロ…ぃない…」と呟いた次の瞬間、大声で狂ったように嗤い出したのだ。
 
怯えて動揺した森澤は先に逃げた池内の後を追い、結局2人とも狂笑する老母を置き去りにしたままほうほうの体でスタッフのバンに戻り、「写真は?」と聞く菊池に「ありました…でも今日はムリですね…」と答えるのがやっとの状態。つまりは最大の目的である写真奪還には至らず終了。
ただ一方で、投稿者戸松から「八幡がようやく昏睡から覚めた」との報が入る。
 
その後スタッフは、老母の従妹の高野を探し当て話を聞く事に。
彼女は「もともと平塚家は親戚付き合いもほとんど無く、法要の席での噂話に過ぎないが」と前置きし、平塚家の母幾子は長男和弘が5歳の時離婚、その和弘も小学4年(10歳)の時小児ガンで死亡していると。
ただその後、幾子は和弘が生きているかのように振る舞い、学校の制服を買い揃えたり、大学の願書を取り寄せたり、等身大の人形を作り誕生日ごとに写真を作らせたりしていたのだそうで、その理由を聞かれた従妹は「供養のため…じゃないですかねぇ」と漏らす。
一方で、次男明生は順当に成長し20代で結婚したが、3年前、妻と共に交通事故で死亡。
その頃から幾子の様子が明らかにおかしくなり、「夜 和弘が隙間からじっと見て恨み言を言う」「(和弘が)怒ってる」「なんとかしなくちゃ…」等々口にするようになったと。
一方、後日改めて平塚家を訪問したスタッフは、完全拒絶されるものの、幾子と思しき念仏のような声を聞き、まだ八幡の写真を取り戻せていない事に不安を抱く。
スタッフは「母幾子が幼くして死んだ長男和弘の供養のために、生きているかのように振る舞う供養的行為が高じ、後年次男明生の死も相まって、和弘(の妄霊)に責められていると思い込み、八幡との冥婚を思い立ったのでは」と結論し、投稿者戸松に報告。
彼女からは「昏睡から覚めた八幡が徐々に回復に向かっている」と聞き安堵するが…。

 

 

初見の衝撃から何度この3巻を見直した事か。
そりゃもう色々あるんだ、穴が。そもそも八幡のアパートの住人と会話すらしている『(八幡の)婚約者』って結局誰?とか、写真家下村とのやり取りがメールって一体誰が打ったんだとか(屋内にはPCやスマホなどの機器は一切見当たらない)、母幾子と息子らのビミョーに合理性を欠く年齢設定とか、和弘はともかく少なくとも小中高と順当に育ったはずの明生の(時代的)痕跡が一切感じられないとかとか。
ただ、それが全てラストの老母幾子の狂笑でぶっ飛んじゃう。そのくらい強烈なインパクト。
 
ようやく平塚家屋内に侵入した、玄関で問答する場面。
森澤が小脇に抱えたカメラが突き当りまでの通し廊下を映し出すんだが、その突き当り=台所の入口付近にシルエットの老婆が見える。
それはふいに侵入した正体不明の外敵を全力で警戒し、なにかあれば逃げたり応戦(!)できるよう、鈍くなった五感を全力でそばだて身構えたまま微動だにしない。…多分、もう既にここから怖いのだ。
言うまでも無く悪いのは嘘で個人宅に押し入りさらには盗撮までかましている取材陣で、リアルなら通報レベルでどう見ても作為有り有りなのに、この緊張感はどうだ。
 
離婚からたった5年後、小学4年で可愛い盛りの息子の死がどんなに辛いかは察して余りあるが、その後彼女が和弘に妄執する一方で、次男明生は着々と真っ当な人生を歩み20代で結婚すらしてるっていう虚無感。
想像して欲しい。小学生のサッカー少年明生が同級生池内を家に上げた時、2階の隣室には中学相当の『お兄ちゃん人形』が座ってたわけで。
この腑に落ちなさを埋めようと、森澤氏のTube動画までチェックしたがこの件は当然ノーコメント、ついには特定勢によるロケ地発見!ってのまで見つけてしまいw だろうね!ってなったりもしたんだが…
 
じゃああの老母幾子の狂笑は?まさしく田舎老人ぽい「…いやいや」の生っぽさは?「ノロイ」の寺十吾氏や久我朋乃さんレベルの俳優さん?それにしちゃ茶菓子出す時のあの手はどう見ても作り(特殊メイク)じゃない気がするんすけどね。
ただ肝心の幾子の生活が一切見えない。毎年和弘の写真をプロに作らせてたとか、今回の件にしても下村に報酬を払ってるわけだし、一体彼女はどうやって生計を立てていたのか。
で兄を「ヒロ」って呼ぶんすよ、「(カズ)ヒロ」と「アキ(オ)」って超呼びがちじゃないすか?^^; あと2階の空き部屋のクリーニング済みのスーツ。アレは明生の結婚式に和弘(人形)に着せたモノじゃないのかとか。
 
あと和弘人形の服や古いギターとマンガ本のチョイスに70年代から一切更新が無い、このキショさがお分かり頂けるだろうか?^^;
これが母親と息子だから分り難かろうが、例えば年頃の娘が同居の父親にうっかり洗濯物の取り込みを頼んじゃった場合、小さく丁寧に畳んだソレを「はい、お前のPンティ」って渡された瞬間だよwそのキショさ。
少なくとも明生と同級の池内があの年恰好で、5歳時に離婚てんだからギリ5歳差の兄弟。
なのにそこに順当に育ってたはずの明生の痕跡が欠片も無く、一方で大学生『和弘』は、PCもスマホも持たずゲームもせずカノジョもおらず酒も煙草も夜遊びもせず音楽すら聞かず、日々参考書を愛読し好きなマンガは「天才バカボン」と「釘師サブやん」暗い部屋で一人静かにギターをつま弾き「理想の女は『清らかで慎ましい処女』」ってどうなんだ^^;
…狂ってる…
だから!5歳で死んだ和弘に執着するあまり60代の母親幾子が作り出した妄想の大学生和弘って事じゃん?!じゃあ仮にだ!幾子が狂ってるとしてだ!卒アルの思い出話は明生に関する記憶じゃないのか?メールは?アレは幾子が打ったんじゃないのか?!…
 
で、後日判明する問題映像部分。
突時、狂笑する母幾子の傍で勝手に首を動かして母を見やる和弘(人形)、そしてその部屋の廊下側のガラス戸に映り込んだ訴えるような人影。それは母の確執により未だその場に縛られ、ヒトでも霊でもない異質なモノに変化した和弘の慟哭ではと…思えたり。
本当の結末は自己責任で。まーこれまでも何度も同じ結末はあったがこれほどまでに酷い結果は類を見ない。菊池監督ではないが「じゃあみんなで祈ろうか」とガチで思えた瞬間である。
 
小品では、長年立ち退きを拒んだ老夫婦の遺物と思しきHi8の不気味な映像「消える」、菊池監督本人が洞窟突する「ひな人形」、青天の緑地公園の側溝に棲むナニカ「指輪」など逸話の濃さと落差が十二分に楽しめる巻かと。

 

 

●「70巻」「Fake」

2023年7月現在、菊池監督の最後の担当巻である。
夫の実家に帰省した際、投稿者浜野典子と夫昭一、娘の小春で花火をしている最中、いないはずの女の姿が映った事が発端で、『濡れ女』の噂を追う事に。
『濡れ女』とは、雨天に黒い顔で長い首の不気味な姿で出現し、いなくなった子供を探しているため、「その子は死にました」と言えば回避できるという17,8年前に流行った都市伝説であると。
そもそも見た事があるという少年の『濡れ女』の画が強烈で印象深いが、昭一の異常なほどの「幽霊嫌い」からの「幽霊が映ったビデオ」の謎と真相、さらに数十年前に発生した子供の失踪事件の真相へと発展。
菊池監督とスタッフらによる超タイトな現地取材、実地検証、関係者への追跡取材、山林に埋もれた墓碑群や古井戸等々、ロケだけとってもかなり過酷で詰め込み過ぎ感は否めないが、伝説の発祥となった事件に登場する親子の悲劇、母親の狂気、子供が最期に見たであろう景色等々、菊池監督らしい切ない余韻は間違いなく残るエピである。
小品では、留守中ペットカメラに映り込んだ怪「ペットカメラ」、四半世紀前の心温まる映像に映り込んだ男の妄執「二段ベッド」等々、画が強い作が多い印象。
 
この監督はここまでというのは、次巻の予告が出ない限りこちらが知る由もない。
その後、この時点で演出補だった川居尚美氏は本シリーズでは監督まで務め、その後も着々とスキルを重ねているし、森澤透馬氏は現在「元ほん呪スタッフ」として「ワンパク」名義での「ホラホラFILE」(YouTube)の配信や有名ソレ系チャンネルのゲスト等々で活躍中だが、菊池氏に関しては時折マイナーな心霊系OVを手掛けられたり、他作品への顔出し、本シリーズ後発巻では演出協力等々の裏方でお名前を見かけるくらい。
この「Fake」が本当に最後の作でよかったのか、想いは遂げられたのだろうか、…と思わずにはいられない。
彼が彼なりの作品を携えて再び陽の当たる場所へ戻ってくれることを、心から願いたい。

 

 

TSUTAYADISCAS TSUTAYADISCAS

 
 
・現在、TSUTAYA DISCASでは本編に加えSpecial、VerX、Best版等々の番外編を含めたほぼ全作が未だレンタル可能なのでぜひ。
当方ビデオ時代からのファンなので、制作会社推しのB~Z級の怪作や韓流ドラマ等々の予告編、チャプターや冒頭の警告テロップのパターンや凡ミス探し、映像には登場しない製作陣、報奨金額の編纂等々の徹底チェックが可能な盤こそがおススメかと。信じるか信じないかはあなた次第だが。