あやし野ビデオ館

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クトゥルフ的 ラヴクラフト的 異世界モノへの誘い Ⅰ

「人喰いトンネル」と合せておススメしようとあれこれ考えてくうち、長くなっちゃったので別立て第1弾。
壁の向こうは異世界異世界トリップ、異世界の拡大・浸食、異世界召喚…
昨今流行の異世界(転生)モノではなく、クトゥルフラヴクラフト異世界にようこそ。

 

 

 

(2002年/米) 砂漠の新興住宅地に越してきたベンとケリー。
ところが入居早々、買ったばかりのサボテンが枯れ、怪音や物の移動など怪異が起こり、ケリーは訳も分からず怯えるが、ベンには少なからず心当たりがあった。
彼は学生時代、仲間と降霊実験を行って失敗、当時の恋人が異空間に飲まれた事を機に絶縁した過去があり、その後も研究を続けていたリーダーのパトリックから、実験の失敗と助力を求めるメールが再三届いていた事を言えずにいたのだ。
異変は間もなく隣家の犬を殺し、ケリーに付き纏い、キッチンには巨大な異物が発生。中から元カノと共に消えたはずの人型が出て、ケリーにもバレてしまう。
異界はますます拡大増強し、2人はついにパトリックと再会、収拾を図るが…。
『降霊実験』という人為的超常現象で召喚されたのは「人類以前の名も無き太古の存在」。
それが引き起こす現象は人知を超えてて、一瞬で器物や部屋を捻じ曲げ、生物の生気を吸い取り異物を発生させ、次に何されるか想像もつかない。何度見てもゾッとするのが空間の”裏返り”と”最期の光景”
主演のケリー役アシュリー・グリーンは「トワイライト」シリーズ、ベン役セバスチャン・スタンは「アベンジャー」シリーズでご存じの方も多いと思いますが、諸悪の根源パトリック役が「ハリーポッター」のマルフォイ役だったトム・フェルトンで、キャラがビミョーに被ってるとこもポインツかと。たまに配信もあるので、ぜひこの逃げ場のない絶望感をご堪能あれ。

 

(2015年/米) 不気味な浮遊体が異界へと誘うオムニバス。浮遊体の正体も 始まりも終わりも分らない全4話の絶望。
ツカミの「The Way Out(出口)」から謎、謎、謎。
深夜、トラックで逃げる血まみれの男2人。空にはカツオノエボシ状の触手をぶら下げた真っ黒な浮遊体が。夜が明け、ようやくガソリンスタンドに辿り着くが…。
第1話「サイレン」3人組のガールズバンドが荒野で立ち往生。中年夫婦に拾われ自宅に招かれるが、奇妙な双子の家族が加わり、異様なパーティーが始まり…。
第2話「事故」深夜の森を車で走っていた男が女を撥ねてしまう。女は瀕死の重傷でやむなく911に通報するが、救命士の女の指示で不気味な病院に導かれ自ら女を処置する羽目に…。
第3話「脱獄」深夜、場末のバーに老人が乱入。銃で脅して「妹を出せ!」と暴れてバーテンに案内させ再会を果たすが…。
第4話「The Way In(入口)」幸福な3人家族の家に覆面強盗が乱入。妻と娘は隠れるが夫は強盗と対峙するうち何かを思い出し…。
一話完結だが関連してる式のオムニバスで、錯覚と疑いたくなるような黒い浮遊体が常に視界の端にいて、凄まじい圧をかけてくる。
中でも唐突過ぎるオープニング、ハイソなリーマンが奈落に突き落とされる「事故」は絶品で、何もかもがどこかズレてて異様。
副題は無くようやく慣れ始める頃、気になり始めるラジオDJの真意と各話の関連性、そして最後にこの副題を探し当て本気の膝ポンができる悪夢の宝石箱。ゴア度高めでホラー好きには全力で推したい無冠の銘品。こっそり夜中に1人で見て存分にうなされてください。

 

(1990年/米) 70年代末。ベトナム戦の帰還兵ジェイコブは、未だ戦地での悪夢にうなされるが、NYの郵便配達人で、同じ局に勤める恋人と狭いアパートで暮らしている。
しかしその日常が少しづつ狂い始め、スリップするように戦場に引き戻され、また周囲の景色や人々も異様な姿に見え始める。
果たしてどれが現実でどれが悪夢なのか、本当に自分はあの過酷で理不尽極まりない戦地から帰還したのか、今自分に見えているのは本当に人間なのか…。
何よりこの異様な現象の原因がなんなのか、始まりはどこでいつ終るのか…。そんな彼の前にメガネの男が現れ…。
「危険な情事」「ナイン・ハーフ」等で知られるエイドリアン・ライン監督によるサスペンススリラー映画。当時スタイリッシュと絶賛された作風に加え、後続のホラー映画に多大な影響を与えた戦争(主に傷病兵や野戦病院)のイメージは残酷だがある意味アートのようでもあり、未だ他の追随を許していない。
タイトルでもある「ジェイコブズ・ラダー」(ヤコブの梯子)の真実と意味とは。
ちなみに発熱したジェイコブが氷水の風呂に投げ込まれるシーンは、米軍ではガチだそうです^^;
「危険な情事」のウサギ煮込みですら直視させなかったライン監督が、ここまで徹底して描いたベトナム戦争の闇とはなんなのか、今一度考えさせられる名作です。

 

(1997年/米) 2047年。2040年に海王星付近で消息を絶った超深宇宙探査船イベント・ホライゾン号が現場付近に出現。
微弱な生命反応を捉えた政府は、生存者の救出と調査のためR&C号を派遣する。
実はその船はグラビティ・ドライブ(重力推進)という人口ブラックホールを用いた最新航法の実験船で、事故原因も乗組員の安否すらも不明の危険な調査だった。
R&C号の乗組員は男女8人。ミラー船長始め皆ベテランだが、唯一イベント・ホライゾン号の設計者ウェアー博士は宇宙に不慣れな上、乗員の安全よりイベント・ホライゾン号を優先しようとするため、疎外される事に。
やがてR&C号はイベント・ホライゾン号を発見し救助に向かうが、船内は荒れ果て機関室は血みどろで、傷だらけで目の抉られた遺体以外の生存者はおらず、航海記録のみを持ち帰る。
記録には狂乱し殺し合う乗組員の異常な最期が記録されていたが、理由を知る間もなく2隻が衝突、R&C号の乗員らはやむなく一度は乗員全員が死亡し、不気味な”コア”だけが”生きて”いるイベント・ホライゾン号へと移動する羽目に…。
特撮からフルCGへの移行末期の宇宙系SFホラー。監督は「バイオハザード」シリーズ、「パンドラム」等で知られるポール・W・S・アンダーソンで、圧倒的なSFみと造形だけでご飯3杯イケる大作です。
乗員らに迫る危機また危機、次第に明かされる心の闇、それをナニモノかに弄られる不快感絶望感…歴が浅くそれらが無い者は、わずかなミスが命取りとなる無情。前半逆に船員の安全『だけ』を頑なに優先する慎重派のミラー船長が超癇に障って、この男にゃロマンは無いのか!ってなるんすけど、後半できちっと答え合わせが。そのヘンがいかにも往年のSFらしくて大好き。
船長は「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーン、諸悪の根源となるマッド・サイエンティストがサム・ニールとくれば面白くないわけがない。「マウスオブ~」同様ここでもサム・ニールは粛々とドツボにハマり悲惨な末路にひた走る事に^^;
脇を固める乗員らも名優揃いで、各々が抱える深い闇にとり殺されていく中、数人が生還を果たす結末も実に見事。
ゴア度はそれなり、地獄ってなんなんすかねぇ…そんな事考えさせられる激推し作です。

 

(1994年/米) 保険調査員トレントは一切人を信用しない現実主義者。そこに大手出版社からホラー作家ケーンが失踪し保険請求があったとの調査依頼が。
彼の小説は空前絶後の大人気だが人を狂気に陥れるとの噂があり街では暴力が横行、トレントも未発表の初稿を読んで発狂したケーンのエージェントに殺されかける。
それでも彼は出版社と作家がグルで保険金詐欺を企ててると直感、ケーンの美人担当者リンダと小説に登場する町”ホブ”と思しき田舎町に向かうが…。
遊星からの物体X」「ハロウィン」「ザ・フォッグ」等々で知られるジョン・カーペンター監督による異世界ホラー。
全体カーペンター節炸裂してるし、主演のサム・ニールは粛々とドツボにハマってくし、さり気に名優チャールトン・へストンや「オーメン」(1976年)の首チョンパ担当デビット・ワーナーが出てたりするおいしみも。
異界みは十分だけどゴア度は意外と低めなので、お茶の間でも鑑賞可能なんでぜひ。

 

この”ホラー小説が現実化し、小バカにしていた主人公が異形の世界に迷い込み追い詰められるアイデアはSキングを想起させるが、どちらも怪奇小説家H・P・ラヴクラフトのオマージュ。
日本でも漫画家では諸星大二郎、まんまその世界観の伊藤潤二等が知られている。
実写化作品「うずまき」は2000年公開のHiguchinsky監督作品。田舎町黒渦町の住民が唐突に”うずまき”に魅入られる”病”を発症、瞬く間に蔓延。それは”うずまき”に魅入られ取り憑かれていき、次第に身体がうずまき状に変化し死に至る怖ろしい病で…。
うずまき収集家に大杉漣、その妻役に高橋惠子、ストーカー男役に阿部サダヲ等々今では考えられない豪華俳優陣に加え、伊藤潤二の異様な世界観を見事に具現化した脚本や特撮も非の打ち所がない伝説のカルト作。
「富江」は、絶世の美少女富江に魅入られるとなぜか彼女を殺害したくなる衝動に駆られ…というセオリーに基づき、続編が多数創られた人気シリーズ。監督陣では清水崇及川中などが手掛けており、魅惑の美少女富江役で一気にブレイクした菅野美穂、他に宝生舞仲村みう等々、魅入られる男子役では妻夫木聡窪塚洋介がいたりする、いわば元祖「ホラーは俳優の登竜門」的作品群かと。
映画ではJホラーの始祖小中千昭脚本、佐野史郎主演のTVM「インスマスを覆う影」等が知られている。VHSのみの未盤化作品で、2024年4月現在配信のみのカルト作なんで機会があったら。