あやし野ビデオ館

怖い映画をご紹介しています

たばかる者たち② 成分と効用「CURE」「蛇のひと」

第2弾は、その成分と効用、物理と実用について。
あ、こういうヤツいるわ~とは思うが、私自身実装してる自覚は無いし、実害として多幸感はあったかもしれんが、何事も”〇〇のせい”にするの嫌なんで。ただ、最悪の結果が出てないだけかもしれないので、とりま経過報告。

 

 

 
(1997年/日) 監督/脚本/黒沢清、音楽/ゲイリー芦屋、特殊造型/松井祐一
■主要人物
謎の連続殺人、自死事件を追うベテラン刑事高部:役所広司
謎の男間宮:萩原聖人
高部の親友の精神科医佐久間:うじきつよし
精神を病んでいる高部の妻文江:中川安奈
巻き込まれる人々:洞口依子、戸田昌宏、春木みさよ、でんでん、螢雪次朗など。

 

■ あらすじ
都市部で殺人及び不審死が頻発する。
犯人は冴えないリーマンや小学校教師と様々だったが、犯行後は精神に混乱をきたしており、どの遺体も頸動脈をX字に切り裂かれていたため、ベテラン刑事高部が捜査に乗り出す。
彼は精神科医佐久間の助言を頼りに捜査を進めるが、妻文江は精神を病んで通院治療中で、事件の事も相まって重いストレスを抱えている。
そんな中、交番でベテラン巡査が若い同僚を射殺。犯行直前に飛び降りを図った不審な男を保護した事実が浮かび上がる。
高部は早速男を追うが、その直後、男を診察した女医もまた、殺人を犯しており…

 

■ 感想
「あんたは誰?」「だからぁ…誰?って聞いてんの」…開始早々に始まる謎の男間宮の、この不遜で不躾な物言いに、イラッと来たその瞬間からワールドに引き込まれる名作、何度見ても新たな発見がある闇落ち考察系スルメ映画。
ついでにこそっとバレますが、間宮の手法は「物理」。それを音響、音効、ありそうであり得ない病院内部や取調室の設え、微に入り細に入り、全てにおいて余すとこなく黒沢監督の世界観で表現してるので、どっぷり浸れる銘品かと。

 

初見から数回目まではともかく頭ン中ぐちゃぐちゃに弄られた感じがつき纏うが、一定数超えると、とある時点で、間宮が可愛く思えてくる。
ああ、多分ここなんだ、と思った瞬間「伝道師」とか「メスマー」とか「青髭」とかとかのピースがバババッと一気に組み上がる爽快感が味わえまふ。
黒沢作品常連の高部刑事役役所広司は言わずもがな、本作の時点で十分実績のあった間宮役萩原聖人の名演も特筆したいところ。メイキングでは「(撮影の事)ほとんど憶えてないんですよねぇ」とまるで間宮が憑依したかのような発言が印象的。

 

これ以上、あんまり考察というか、あれこれ理屈で語りたくないんすよね。色々こむじゅかしい事も出てくるんすけど、考えるんじゃない、感じろって言うか。
そうだ、代わりに間宮と同じ”言葉の魔術師”である船長に語ってもらいましょうかね。
船長、船長! …ああまたなんか食べてる。常温の生肉はダメですって。

 

…感想でスか? どうスても  … 言わねばダメでスか? …
そりゃ素晴らしい映画だと思ってまス 最高でスよ 最高。
ひょいッと現れた男に出会ったが最後、オモチャみたいに頭ン中ァ引っ掻き回されて
いきなり全然関係ねぇ人殺したり、勝手におっ死んじまったり、するわけでスから。

 

一番やるせないのはでスねぇ …
それが自分にとって最高の暮らしだァ、やったな俺頑張ったな俺ァ言ってるヤツが、「実は最高じゃなかった」 って気づかされて、絶望のどん底に叩っ込まれるとこなんでスよ
でも …なんちゅうか … 一番スゴイとこはでスねぇ
… いやいやいや!ケチつける気なんかこれっぽっちもねぇでス!滅相もねぇ!
最高でス! どんだけ最高なんだ!って、こんなオラにだって十分わかりまス!
…どうスても  … 言わねばダメでスか? …

 

コレ見て たンだ 怖ぇとかわけわかんねとかだけでなく「解った」って思った人はでスねぇ
「俺は『CURE』が もしくは超難解と言われる黒沢監督作品が 理解できた」って、ちょいといい気分になってドヤりたくなる「毒」が仕込まれてる。
その証拠にでスねぇ オラのオデコに ほらココに!…モヤッと 薄ぅぅく「黒」って出てるでしょう?
よぉく見て下さい!…見えるでしょう?「黒」って!それがこの映画の「毒」にヤラレた証拠でス!
「『CURE』4Kデジタル修復版Blu-ray」ポチっちゃったモンにしか出ない証拠なんでス!

 

この毒を喰らったヤツには皆出てる!オラだけじゃねぇ!おめぇも!おめぇも!
それは黒沢清監督の「黒」で、けして黒澤明監督の「黒」じゃねぇ!
よぉく…よぉく!見て下さい!見えるでしょう?「黒」って!
… ああ…なんてこった… Vシネとかコメディ系未見なのに… 勝手にこんな気ぃなっちまって
…オラぁ…もう …(暗い洞窟の奥に向かって捌ける)

 

 

 
(2010年/日) 2009年「第2回WOWOWシナリオ大賞」受賞した三好晶子の脚本を、「Laundry」(2002年)「重力ピエロ」(2009年) の森淳一監督が実写化したヒューマン・サスペンス。
■主要人物
三辺陽子(商社営業事務・独身OL):永作博美
今西由起夫(商社課長):西島秀俊 (少年時代/桑代貴明)
伊藤部長(今西の上司):國村準、その妻:石野真子
義太夫の師匠/功太夫:河原崎建三
今西の幼馴染:板尾創路 (少年時代/大塚智哉)
由紀夫の異母兄/今西和雄:久野雅弘
今西の母:遠山景織子
商社社員 田中:田中圭
陽子の婚約者:ムロツヨシ
今西が関わった人々:劇団ひとり、勝村政信、佐津川愛美、ふせえり、北村有起哉など

 

■ あらすじ
商社勤務のOL陽子(永作博美)の上司、伊藤部長(國村準)が突然自殺を遂げる。
社内は騒然として対応に追われる中、陽子だけが内密に幹部に呼ばれ、伊藤部長の部下で陽子の上司である今西課長(西島秀俊)が、騒動と同時に失踪、巨額の横領の疑いがあるため探し出して連れ戻せと命じられる。

 

今西は途中入社だが部長にとっては優秀な部下であり、次々と難題を解決するエース。
片や陽子は地味だが機転が利く頼れるベテランOLで、ともにアラフォーの独身なので仲を疑われたからだった。
しかし陽子には遠距離だが一応結婚前提の彼氏がいるし、今西には保険外交員の元カノがいて、意外な事に真っ赤なアルファロメオを所有している事などが判明。

 

また彼の隣人やかつての同僚などに話を聞くうち、皆押しなべて今西を信頼して相談し助言を得ているものの、結果相談者本人の”困り事”や”希望”は解決はするが、そのため取り返しのつかない事態に陥ったケースも多く、一概に今西=善人、助言=善意だとは言い切れない側面もあった。
また部長の葬式ではついに、彼が部長にもその手を差し伸べた事実が判明するが、結果部長は自死したわけだし、今西がその金を持って逃げたとする説にも、陽子が得心が行かなかった。
さらにその後、事態を知っていた部長の妻が全額を弁済したため、今西への共犯疑惑は晴れるものの、彼を連れ戻せと言う社命は継続。
そこで陽子はさらに、今西の出生の秘密に迫るべく、出身地の大阪に向かうが…。

 

■ 感想
物語はこの先、”今西の出生の秘密”に迫っていくが、それは見てのお楽しみ。
陽子と今西はちょっといいカンジではあった、かもしれない。
遅くまで一人で残業していた陽子に、同じく遅くに帰社した今西が「夜、口笛吹くと、蛇出るで」と声をかける。
猛暑の日中、不意に陽子に電話してきて「いいなぁお前は、クーラー効いてるとこで仕事できて。俺はもう死にそうや」とウザ絡みする。
そして会社の廊下で、小声で彼氏に電話していた陽子に「結婚すんのか」と聞き、ちょっと考え込む彼女に「あら、返事しないよこのひと」と。
陽子はそのたび、ちょっと首を傾げ即答しない。
一見恋の駆け引きに見えるが、彼女は今西の関係者の話を聞くたび、首を傾げ「そうかなぁ…」と呟く。
果たして陽子は、今西の何に気づいているのか、彼女の目には、彼がどう映っているのか。

 

今作は公開当時、諸々あって永作さんが超苦手で、長年先延ばしにしてきた作で。
サス好きとしては、どしてどして?陽子は今西の何がイヤなの?と思わせる引力が凄まじいんだが、じんわり見てるうちなんとなく気づいて来る。こいつと遭遇したら地獄だぞと^^;
あたかも「ひかりごけ」の船長の論に気づいた瞬間のように。

 

ただ、今西は相手を”喰おう”としているわけじゃない。
ある人には教祖のように救済を与えるし、ある人はそれを拒否ったせいで崩壊するし、またある人は…って具合で、人生最大の決断の時になぜか今西がいて、その提案がその人生を確実に左右する。
それがどういうことを意味するのか、陽子は気づいているようだと。
AIによればこういう傾向のヒト、もしくは論法を差して”マニピュレーター””マニピュレートする”とかいうらしすよ。で今西が操作しているのは男社会における”ヒムパシー”だと。

 

ただそれだけでは終わらない、物語の核心は後半の”今西の出生の秘密”だし、そここそがドラマチックなんだが。
もう一つ、じゃあなんで陽子は今西のソレに罹らなかったのか。そして失踪した今西は今どこに?!
…見終わったら今度は陽子目線で、絶対見返したくなる。
今西の過去に登場する子役くんらも本当に非の打ち所なく見事なんで、ぜひその目でご確認を!

 

 

■ 合わせておススメ
 
白状すると西島氏の恋愛/人情/アクションドラマはほぼ見ないし(頑張って腹据えて見始めてもほぼ途中リタイア^^;)、大好き作「CASSHERN」の上条役も(劇場に2回も通ったのに)ほぼスルーw。
しいて言えば「楳図かずお恐怖劇場」の「蟲たちの家」(黒沢清監督)を言われれば思い出す程度だったとこに、2010年のドラマ「ストロベリーナイト」の菊田役で強烈なフックを、イランのアミール・ナデリ監督による「CUT」(2011年)に強烈なアッパー喰らって見事KOw 数ヵ月『だけ』しか考えられなくなったことがw

 

「CUT」の西島氏は生活の全てを映画に捧げるほどの映画バカ(褒めてます) なのに売れない映画監督で、兄の借金返済のため、ヤクザ相手の『殴られ屋』をする、2時間ほぼ殴られっぱなしの作で^^;
一般の評価はぶっちゃけ芳しくないし、あのイケメンが終始顔中腫れあがって汗汁っぽいし惨いのに、ともかく切なくて健気で、奇麗で尊くて儚くて、彼が作中列挙し続ける名作映画の何本かしか見た事無いけど、ほんと泣けるんすよ^^; あまりに映画バカで(最上級の褒め言葉)。
ともかくナデリ監督って、『映画』がエンタメとして気軽に消費されてるわけではないイランの監督で、西島氏と出会った際、2人は恐ろしく意気投合し、ナデリ監督が西島氏を当て書きして仕上げた脚本である…とかとかね。
諸々考え併せるとひどく切迫してるし、また私なんか”映画好き”なんてとても言えないただの端くれだけれども、なんかスゲー色々が沁みるし、映画がいつでもどこでも自由に見れるこんな恵まれた環境にいるのに、もっとちゃんと良い映画も見なきゃあかんなぁ…><、とか思うわけすよ。
まー詳しくはまた別の機会に。

 

今回ご紹介した「CURE」は一見サイコ的でホラー仕立てだが、「蛇のひと」の論法などは特に、よく目にするのが新興宗教や保険や投資等々の「勧誘」かも。
「CURE」の間宮も「蛇のひと」の今西も、ピンポイントで心の隙を突いてくる。他人にとってはほんとどーでもいい事だし、無きゃ無いでやり過ごせなくはない些末な心のササクレ。
あーまたか、はーそうですか、だからなにか?とやり過ごす毎日にげんなりしてるそこのアナタw うっせーわ‼と分かり易くキレれるのは10代までww
その些末なササクレを、間宮は鋭い爪でカギ裂きに拡げて抉ってくる。方や今西は、ササクレにそっと手を置き「あんたが頑張ってるのを俺は知ってる。なぁこうしたらどうや?そしたらみんないっぺんに幸せに…」と水を向ける^^;
… …怖いでしょw
つぶさに読んだわけではないが、甲斐谷忍、原案:夏原武の人気コミック「カモのネギには毒がある-加茂教授の"人間"経済学講義」とかは かなり勉強になる模様。

 

ちなみに「CURE」。女医が行う「(男性患者の)下半身を露出させて寝かせ、足の付け根(鼠径部)のリンパ節を触診する」という診断方法は、インフルエンザの検査キットが普及する以前にも無かったそうで。
つまりあのシーンは、行為そのものに於いて性別問わずナニカを刺激する起爆剤であり、間宮ではなく黒沢監督が観客にカマシた”ササクレのカギ裂き”という事。
事情通が見れば思わずツッコみたくなるそんな地雷が随所に埋め込まれてる地雷原みたいな映画だなぁと^^;(最上級の褒め言葉)。