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ついにシネマート新宿凸「クルージング」潜入して没入せよ

シネマート新宿での上映が12月26日までなんで激烈pushしときたい!

 

 

左上はリバイバル期間中、異様な熱気で更新され続けた「クルージング」公式X。右上は悲願のシネマート新宿凸した時の当方のポスト(遅ればせながらご連絡はXメッセまで^^;)。ずっと二の足踏んでたXアカ曝してまでも、その時の興奮をお伝えしたい!
右下は作品概要やポインツを手短に書き散らかしてる当ブログ内の元記事 この項のテーマは「仕事や職業意識に縛られ壊れゆく男たち特集」直リンはこちら
フリードキン監督は「エクソシスト」以来信者だし、パチーノは「スケアクロウ」「狼たちの午後」でドはまりしてるんで、公開当時は誰に後ろ指差されようがどうしても劇場で見たかった問題作だった(公開記念の黄色いバンダナもらいますたよw)
それから幾年月、2006年の待望の邦訳版DVD化だけでもありがてぇってだく泣き即買いしたのに、まさかのリバイバルなんてマジで夢見てんじゃないか状態だったのに、そんな時に限って絶望的な突発事件の真っ最中だったりして><、、、シネマート新宿凸も絶望的だったんすけど、なんとか凸出来て本当によかった!><、、

 

とりあえずムリゲーと思ってた時点で兵隊出して、大好評のパンフ「80年代アメリカ犯罪映画の世界」と関連チラシだけゲット。その時の大興奮がこちらw
ほんとにマジガチでこのパンフ、近年稀に見る内容の濃さ、デザインに加え、当時の日本ではさして取り上げられなかった作品詳細、制作事情、様々な誤解や批判に晒されてたリアタイのフリードキン語録、パチーノとの関係やその反応(なぜ彼は本作に関して未だ消極的なのか等々)を、有名評論家や映画マニアの見解や憶測ではなく、当時日本には入ってこなかった海外の元記事から引用翻訳してるんで凄まじいリアリティだし、また表題の通り当時の犯罪映画関連の記事や広告などなど、チビチビやりながらじっくり読み込みたい逸品。
内容は刻々と「クルージング」公式Xに挙げられてったんだけど、昨今流行りの”お下劣タイトル詐欺”のまさしく真逆、買って損は無いしわずかにこれからって館もあるので見つけたらマストバイすよ。

 

さてこの「クルージング」。信じらんないかもだけど、当時の日本では「恐怖の報酬」「フレンチコネクション」って名作以前にアクションエンタメの午後ロー常連作って認識だったんで、当然ながら「エクソシスト」は緑のゲロと首回転と後年色々あった子役時代のリンダ・ブレアの十字架ぶっ刺しシーンのイロモノホラーって扱いで(惨い、惨過ぎる><、)
方やパチーノは日本でもメガヒットした天下のコッポラ印の「ゴッドファーザー」シリーズのイケメン枠にして「哀しみの街角」「スケアクロウ」等々70年代ニューシネマのアイコン的な大スターだったんで、なぜ彼がこんなイロモノ映画(〇モに変装する役=ああなんて身もふたもない><、)受けたのかあまりに謎過ぎて、全く理解されなかった。
巷では「あのフリードキンがまたやらかしやがった!」といきなりお笑い種で、あっちゅー間にレー〇ーラモン等々お笑いギャグ枠で弄られまくり。作品を見ても無い、この有名3作ですらTV放映でしか見た事ない、フリードキンを知りもしない輩には「あーあの〇モ映画だろ?」、ソレ系同朋にさえ「私奇麗な男しか見ないの 汚いの苦手なのよね」等々いきなり唾棄されるのも初めは泣くほど悔しかったが、そのうち色々吹っ切れちゃってw
エクソシスト」が解らない輩に「クルージング」が解ってたまるか、「狼たちの午後」をズタズタカットの吹き替えでしか見てない奴らにパチーノのなにが解るかと開き直り、当ブログにこそっと入れ込んだ時のように、折々に触れ「でもいいから見て」「このパチーノもたまんないすよ」「あー…こんな傑作なのに幻の珍作とか言われちゃうのかなぁ(遠い目)」と呟き続けて幾年月w

 

パチーノって、老境に至った現在は結構芝居大きくて大物オーラ消さないんすけどw 若い時分は実にカワイコチャンでねぇ。日本で喩えるなら今は大物”右京さん”役者に成り上がった「傷だらけの天使」時代の水谷豊かな。まー今思えば当時の彼は明らかに「ジャイアンツ」「エデンの東」の早逝した名優ジェームス・ディーンやこの時代のパチーノを意識してたかも。
またこの頃のパチーノって「パピヨン」「真夜中のカーボーイ」の頃のダスティン・ホフマンと被るんすよ。ただダスティン・ホフマンはあまり”汚れ”演らない方で。かのペキンパー監督のバイオレンス映画「わらの犬」ですら堪えて堪えて堪えてからの暴発って役どころなんで、パチーノとは根幹が違う。
パチーノはいつもどこかに危うさと狂気を孕んでる。
「クルージング」のパチーノはまさにそれで、昇進のため知りもしない興味すらないゲイ世界への潜入捜査を二つ返事で引き受ける冒頭、軽蔑とか能動的な感情は無く、フツーに「えー俺って〇モにモテるんすか?勘弁してくださいよぉ」みたいな軽いノリ。
ただ凄まじくカンがいいんで(これも彼の特徴)、警官スタイルのバーで入店を断られたあたりで、なぜ馴染めないのか、自分に何が足りないのかを察して、がむしゃらに鍛え始め、次のシーンでは何の違和感もなく場に馴染んでる。
けどそこは仕上がりじゃない、あくまでもスタート地点だという事を、中盤以降パチーノも見てる私らもいやというほど思い知ることになる。

 

また「エクソシスト」の時も思ったんだけど、フリードキンて個人的にはミーハー感覚だと思ってて。だからガチ勢に嫌われる。
そもそもキリスト教とは縁遠かった私にとって「エクソシスト」は「デビルマン」(原作)や「オーメン」(第1作)と共に人生変えた作品で、その強烈な興味からとあるキリスト教系団体(の中のヒト)と延々数十年間もの付き合いを持つことに。
そこで学んだのは「中と外は別世界」だし「中の人間が語る中の様子は”外面”」「中の事は中の人間にしか分からない」という事、つまり『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている』けれど、覗くだけでは本当の事は分からないのだ。
つまり「エクソシスト」はキリスト者ですらない部外者が可否を論じるそのものがお門違いで、同時に「クルージング」が当時のゲイストリートのガチリアルかと言えばそうじゃない。ドキュメンタリーではないんでね。
彼のめんどくさいとこはそこで、興味対象にロックオンして研究観察、無謀にも”深淵の中のヒト”にもアクセスして掘り下げ、彼が目撃した”その深淵”を彼なりの言葉で表現する。
特にこの「クルージング」の場合、「フレンチ・コネクション」の流れからジェラルド・ウォーカーの同名原作(1970年)の映画化話があった時、あまり乗り気ではなかったそうで。ところが今回初めて知ったんだが、実は「エクソシスト」のトラウマシーンとしても有名な少女(リンダ)の病理検査シーンで、技師役だった男ポール・ベイトソンが、撮影後、実際にゲイの殺人事件を犯し逮捕されたと知り、俄然映画化に興味を示したそうで。この詳細は、大好評のパンフ「80年代アメリカ犯罪映画の世界」にあるのでそちらを。

 

面白いよね。彼の場合そこでほんの少しこうした奇跡が起きる。それに気づいたのは「エクソシスト」公開後、数十年経って「ディレクターズカット版」が公開された時。
「L.A.狼たちの街」もそうだけど、彼の演出はリアリティが売りだが、失敗すると凄まじく安っぽい俗物に見える。何の脈絡もなく唐突に挿入されるリーガンのクモ歩き(背面階段降り)、木立の影にちょこちょこ浮かぶ悪魔顔や囁きは痛々しいほど安っぽく、こんな恥ずかしいモノ今更リリースするなんてドキンちゃん、よほど金に困ってるんだろうか?^^;と心配したくらい。
翻って、例えばベイトソンの一件が無ければ彼はこれほど本気にはなれなかっただろうし、リーガンのクモ歩きをカットしてなければ「エクソシスト」はまごう事なきB級ホラーで、どちらもガチ勢に鼻も引っ掛けられない凡作になってたんだろうなと。
ご機嫌でポニーの話をしてとうに寝付いたはずのあどけない少女が、唐突にホームパーティに現れ、ゲストに「おまえは 宇宙で死ぬ」と憎々しく言い捨て、高級ペルシャ絨毯に立位で放尿する。もうそれで十分なのだ。
「森で真っ黒なタールのようなものを見た。その中心は燃えるような赤だった」そのタールが何を意味し、赤がストレスなのか狂気なのかなんてどうでもいい、結果彼は夜な夜なレザーの感触と臭いと殺意を纏い、街をクルーズする。
エクソシスト」のカラス神父の老母は彼を幼名で呼ぶ。彼は既に大人で精神科医としても神父としても十二分に精進しているのに。けれど母親は「ティミー」と呼んでは救済を求める、あの地下鉄の浮浪者のように。

 

そう。「クルージング」の取り調べのシーンで、Xとかに流れてるパチーノがいきなりカーボーイハットの全裸黒人マッチョ野郎に全力ビンタ喰らわされるあのシーンに爆笑した貴方。
本編では、あのシーンからいきなり世界線が変わるんすよ。パチーノはさらに事件の深部に深く静かに潜行する。なぜか。それまでの彼はあくまでも”にわか””なり切り”の潜入捜査官だったけど、手加減無しのビンタ喰らって激怒すると同時に”あちら側”に転ぶ。蔑視され、差別され、真っ当な人権すら危うい境界線で生きる彼らと同じ目線に。
それ以前の彼は心身ともに健全な警察官なので、フツーの住宅街で暮らすカノジョさん(カレン・アレン)に会いに行く際にはラフなジーンズスタイルなんすけど、ビンタあたりからコトに至れなくなり、彼を潜らせた上司エデルソン警部(ポール・ソルヴィノ)に「捜査から降りたい」「自分、色々がおかしくなってる!」と訴えるが引き留められる。
一方で善人であり友人として近づき情報を引き出していた隣人テッド(ドン・スカーディノ)の旦那(ジェームズ・レマー)が長期ツアーから帰還、隣室からは毎夜罵声と暴行の音が響き始め、貴重な情報源(と彼は思ってる)を失うことに。
本人は全く気付かない大きな変化。”こちら側”と”あちら側”が交錯し、彼はついにカノジョさんが暮らす住宅街をも、堂々黒レザーを軋ませながら闊歩できるまでに変容していく…。
この深淵に転がり落ちるリズム感。そこにはすでに画面から目が離せなくなってる貴方がいる。…それがフリードキンマジック。
ちな、あの捜査方法は当時ガチに存在したそうでw 「取り調べ中、いきなり出てきたカーボーイハットの全裸黒人マッチョ野郎にひっぱたかれたんすよ!俺の人権どうなってんだ!弁護士呼べ!」と狼狽える容疑者に「は?そんなの署内にいるわけねーだろ?クスリでもやってんのか?ハイ全部偽証~」てな調子だったそうでw 惨過ぎる^^;

 

とまー話出したら1週間はガチ合宿が必要ってくらい止まらないんすけども。最後に着目脇キャラをば。
パチーノの潜入先アパートの隣人テッド(「スクワーム」の名ばかりの主役だったドン・スカーディノ)。やらかそうな巻き毛のカワイコチャンで売れない脚本家。界隈初心者のパチーノにあれこれ情報をくれる事情通。明るいムードメーカーで荒みゆくパチーノの心のよりどころとなるが…。
ゲイストリートを闊歩する女装ゲイ=ダビンチ(「ミッドナイト・エクスプレス」の主役ブラッド・デイヴィスの実弟ジーン・デイヴィス) 。”強い女”キャラだがストリートを縄張りとする第6分署の腐れ警官ディシモーネに目を付けられ、度々搾取されているとエデルソン部長にも訴えるが…。
腐れ警官ディシモーネ(みんな大好き「マニアック」(1980年)のジョー・スピネル)。腐れてます。10年前に女房子供に逃げられて以来、仕事でもプライベートでも界隈をうろつき諸々搾取してる腐れ外道。
エデルソン警部(ポール・ソルヴィノ)。ノンケで彼女もいる若手警官スティーヴ(パチーノ)を犯人の好みという事で潜入させた上司。人望もあるっぽいし勘もいいし気づきもあるがあくまでも警察側という立場は崩さない。
バンダナ屋の店員(パワーズ・ブース)。初心者のパチーノに界隈でのバンダナの使い方を早口でまくす店員。「で、どれにする?」「…考えとく」の会話が絶妙。結果スティーヴは黄色をうっかり右ポケットに下げ絡まれる羽目にw

 

 

「クルージング」は肌感の感覚の触感の嗅覚の映画だ バレ記事などなんぼ読んでも解る話じゃない あの時のフリードキン あの時のパチーノ あの街角 あの音 あの無音 あのノイズ あの公園 あの靴音 そしてあの薄暗い薄汚れた個室で何が起きたか 目を凝らし耳を聳てて刻み込め