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「セッション9」(2001年) 「メアリーが『いい』と言ったからさ。みんな俺に殺させるんだ…」

「セッション9」

 

■ 2001年米製作のサイコ・ホラー。アメリカ、マサチューセッツ州にある巨大な廃精神病院。かつて非人道的な治療が行われた事で閉鎖に追い込まれたその廃墟の改修工事に雇われた5人の職人らが陥る闇とは。
■ 監督/脚本は「マシニスト」のブラッド・アンダーソン。共同脚本はマイク役で出演もしているスティーヴン・ジェヴェドン。
主演は「マグダレンの祈り」(監督/脚本/出演)「マイ・ネーム・イズ・ジョー」のピーター・ミュラン。TVシリーズCSI」のデヴィット・カルーソ、ポール・ギルフォイルらが出演している。
■ 出演/ゴードン(ピーター・ミュラン)、フィル(デヴィッド・カルーソー)、マイク(スティーヴン・ジェヴェドン)、ハンク(ジョシュ・ルーカス)、ジェフ(ブレンダン・セクストン三世)、クレイグ(ラリー・フェッセンデン)、役所職員ビル(ポール・ギルフォイル)、守衛(チャールズ・ブロデリック)、ゴードンの妻ウェンディ(シーラ・スターサック)など

 

■ あらすじ

 

アメリカ、マサチューセッツ州の外れにあるダンバース精神病院の廃墟。
荘厳で巨大なその病院は1971年に開業して以来、最大で2500人余の患者を擁した大規模病院だが、ロボトミー手術等々非人道的な治療が行われていたとされ1985年に閉鎖。
番号だけの無数の墓標、カオスな写真や切り抜きだらけの隠遁部屋(独居房)、地下には死体置き場や、暗く長いトンネルのような通路がある不気味な廃墟だが、閉鎖により締め出された患者が戻って棲みついた事もあったとか。

 

しかし文化財級の建築物として再利用する事となり、アスベスト除去作業に数社の地元会社が名乗りを上げた。
ゴードンの会社もその一つだが内情は火の車で倒産寸前、初児のエマは洗礼式で感染症にかかり、妻と共に育児と看病で不眠不休の日々が続いている。
そこで彼は同行した相棒のフィルに内緒で、昔馴染みの役場職員ビルに最低でも2週間かかる作業を1週間で上げると持ちかけ、なんとか受注にこぎつける。

 

建物は羽根を広げた蝙蝠形で、中央には体育館のような食堂や厨房、手術/治療室などがあり、両翼には入院病棟がある。
中でも重症患者用の独居房は棟の端にあり、途中の廊下は朽ち果て立ち入り禁止となっている。
ゴードンは、その廊下に打ち捨てられた車椅子を見つめるうち「やあ、ゴードン」という恐ろしげな声を聞く。
その日彼は契約祝いの花束とワインを買って帰るが、疲れ果てて車から出る気になれず、庭にいた妻子を見つめる事に。
妻はそんな彼に気づいてやつれた微笑みを浮かべるが…。

 

月曜日。
工期は1週間。職人はベテランのゴードンと長年の相棒フィル、口は悪いが腕のいいハンク、検事総長の息子だが司法試験に落ち続けている真面目で堅物のマイク、ゴードンの甥の職人見習いで暗所恐怖症のジェフの総勢5人。
フィルはゴードンが勝手に決めた無謀な工期に不安をあらわにするが、ハンクに恋人エイミーを寝取られたばかりでカッカしており、彼をクビにしてクレイグを呼ぼうと言い出すが拒否られる。

 

初めてのランチタイム。
フィルは「1週間で上げれば1万ドルのボーナスが出るぞ!」とハッパをかけるが、さもなくば倒産という事実は誤魔化しようもない。
またマイクは、彼の父親が手掛けたこの病院での事件を語り始める。
それはこの病院が操業中だった1984年、催眠療法により、悪魔崇拝者の両親と祖父に幼い頃から性的虐待を受け続けていた事を思い出した女性患者が、3人を相手取り裁判を起こしたというモノで、それを皮切りに病院の内情が明らかになり、閉鎖に追い込まれる事となった事件だった。

 

アスベスト(石綿)は、その粉塵が肺癌やじん肺などを引き起こすと判明、今なお除去作業が行われている有害な建材だ。
職人らは物々しい防護服に防塵マスクで作業を始めるが、ジェフは大音量でロックをかけてハンクに怒鳴られ、はずみでつまづいて電気系統がイカれ、暗所恐怖症だとごねるジェフの代わりに、マイクが地下の配電盤を見に行く事に。
そこで彼は資料室を見つけ「証拠品」と書かれた古い箱に入った9本の治療(セッション)テープと患者の資料を発見する。
彼がその箱を開けた瞬間異様な気配が漂い、皆それぞれの持ち場で小さなケガを負うが、マイクは気づく事無く一人居残ってテープを聞く事に。

 

それは患者番号444の多重人格患者メアリーの治療テープで、医師が22年前のクリスマスイブに起こった事件の真相を聞き出そうとしているものだった。
彼女の中には、臆病で怯えきったメアリー本人と、優しい兄ピーター、利発な少年ビリー、無邪気な幼女”プリンセス”、そしてサイモンという人格が存在しているようだ。
音声では、泣き通しで話にならないメアリーに代わり、プリンセスが出現。「ピーターはメアリーに優しく、イブには両親からメアリーは人形、ピーターは大きなナイフをもらった」と証言していた。
またメアリーとピーターは仲良しだがサイモンを畏れていて、プリンセスはビリーと仲良しだがサイモンを知らず、サイモンだけがなぜか出現しない。
その日、帰宅したゴードンは、そぼ降る雨の中、我が家を茫洋と見つめるだけで、車から降りようとはしなかった。

 

火曜日。
作業開始直後、ハンクは地下道に落ちていた古い金貨を辿り、壁に埋め込まれた大量の金貨を探し当ててほくそ笑むが、その壁の裏は解剖室で、それが患者からはぎ取った遺品とは知る由もなかった。
また昼飯時、マイクをからかったジェフは、逆に押さえつけられ割り箸を眼頭に押し当てられビビる事に。
それはロボトミー手術の一種で、アイスピックに似た器具を眼頭に突き刺す酷い治療法だ。
皆ゴードンの様子がおかしいと気づき始めるが、当のゴードンは妻に電話を切られ、裏庭で若者らと密談しているフィルを目撃する。
その夜、ハンクは金貨を独り占めしようと病院に忍び込み、ようやくそれが患者の遺品だと気づくが、奥から出てきたアイスピック状の器具も一緒に袋に詰め、持ち去ろうとしたところで何者かに襲撃される。

 

水曜日。
ハンクが現場に現れず携帯も繋がらないため、フィルは皆の前で現在ハンクと同棲中の元カノ=エイミーに電話をかけ「奴は昨夜臨時収入があったと言い、マイアミにギャンブル修行に行ったそうだ」と報告。再び「クレイグを呼ぼう」とごね始めるが、ゴードンはフィルが若者らと共謀してハンクを陥れたと激怒し掴み掛かったのだ。
皆は冷静なはずのゴードンの行動に驚いて止めるが、彼は憤然とその場を離れて茫洋とうろつき、外れにある墓地の倒木に腰掛け、妻に電話をして謝罪を繰り返しているところをジェフに見つかって励まされ、ようやく現場に戻る事に。

 

一方マイクは、イラつくフィルをやり過ごして資料室に行き、メアリーのテープの続きを聞き始める。
そのテープでは、メアリーの胸には大きな傷があり、彼女もビリーもサイモンにひどく怯えている事が判明する。
彼女の患者番号は444、ゴードンが腰掛けていた倒木の下にも444の墓石が倒れていた。

 

終業時、ゴードンとフィルは、作業用の簡易シャワー室で二人きりになり、ようやく腹を割った話をする事に。
「一番後悔している事」を聞かれたフィルは「エイミーにハンクを紹介した事だ」と言い、ゴードンは「(契約が決まった)あの日、初めて妻を殴った」と打ち明ける。
「帰宅して彼女にキスをしたはずみにキッチンの大鍋が倒れて火傷を負い、愛しているのに殴ってしまった」
「以来妻には電話しても切られ、家にも戻れずモーテル暮らしだ」と。
彼はフィルに他言しないよう念を押し、フィルは「あの若者らは落書きの常習犯で脅したからもう来ない、安心しろ」「元気出せ」と励まし、ゴードンもようやくクレイグを呼ぶことを承諾し和解する。

 

その夜、ゴードンは病院の庭に停めた車の中で、あの日自宅で起こった出来事や、病院内をうろつく人影の悪夢を見て再びあの声を聞く。
「よう、ゴードン…誰かわかるか?…やるんだ…」
その太股には酷い火傷があるが、消毒薬をかけては絶叫するだけで、医者にもかかってないようだ。

 

木曜日。
フィルは現場に現れたゴードンのやつれ果てた様子を見てついに見限り、密かにマイクに全てを打ち明け相談するが本人に聞かれてしまう。
一方ジェフは、階段室で立ち尽くすハンクを見つけ声をかけるが、陽気なはずのハンクは振り向きもせず指先の血を窓ガラスに擦ったのだ。ゾッとしたジェフは、皆がいる食堂に駆け戻ってその事を報告。
一同は慌てて階段室に向かうが誰もおらず、ゴードンはその場に落ちていた金貨を見つけて、フィルも同じ金貨を持っていた事を思い出す。つまりエイミーとの電話はウソで、ハンクを消したのはフィルなのではと。
ところがその時、上階を駆け回る足音が響き、一同は手分けしてハンクを探す事に。

 

一方、揉め事に嫌気が差したマイクは、隙を見て資料室に戻り、ついに最後のテープ”Session 9”を聞き始める。
それは医師がメアリーから事件当日の様子を強引に聞き出す場面で、泣きじゃくる彼女に謎の人格=サイモンを呼ぶよう迫っていたのだ…。

 

 

■ 感想

 

喰い詰め疲弊した男がどこから壊れていくのか、いつから壊れていたかにハラハラさせられるサイコサスペンスですが「シャイニング」ほどド派手な演出は無く「マシニスト」ほど重くなく、身構えずに楽しめる作品です。
なによりゴードン役ピーター・ミュランが圧巻ですが、CSIシリーズの2人=フィル役デヴィッド・カルーソー、役場職員ビル役ポール・ギルフォイルが出演しているのも嬉しいところです(クレジットはこちらの2人が上)。
ちなみに外観は大変美しく荘厳なこの廃墟、少なくとも撮影時には実在していたようですが、後年取り壊され現在は住宅地になっているそうで。

 

職人たちは皆そこそこ気のいい連中ですが、この廃墟に棲むナニモノかにそそのかされ、ゴードンの意に反して好き勝手に動くのが気の毒で。揉めるたび作業は中断され「そんな事より仕事しろよ」と言いたくなることもしばしば。
小さいながら大切に回してきたこの会社の企業主であるゴードンも、長年の相棒で多分その会社がつぶれれば共倒れを喰らうフィルも、このギチギチの納期が気がかりで仕方がない。

 

けどゴードンははずみとはいえ妻を殴り、ましてやそれが絶望的な結果になってしまったショックをひた隠しにするうち(これはありていの”隠ぺい”じゃない。彼の頭にあるのは「今しょっ引かれたら納期が間に合わない」「この仕事でコケたら地元で仕事が取れなくなる」という職人的な生存本能に他ならない。それがなんとも悲し過ぎて)、いい年して恋にとち狂ってるあのフィルこそが、足を引っ張ってんじゃねーかと疑い始める。
一方フィルは、長年頼りにしてきた相棒ゴードンが多分ムリすぎる契約を取った段階から壊れているのは明々白々、使いもんにならない若僧=彼の甥であるジェフ、屁理屈をこねてはちょいちょいサボってるっぽいエラいさんの息子マイクに手を焼き、なによりあのクソ間男ハンクと何が哀しくて一緒に仕事しなきゃなんねーんだと不満タラタラなのも、非常に判りやすい。

 

また脇を固めるハンクやクレイグは”非常に腕の立つ気のいい職人”だが女や金に目が無いのが玉に傷みたいなこの業界に居がちの好人物だし、ジェフにしてもこの仕事に引っ張ってくれた伯父ゴードンへの恩義も感じていて、何やら大人の事情で悩んでるらしいゴードンをなんとか元気づけようとする優しい青年だが、見習いだからヘマが多いのがあたりまえ、だから彼らは咄嗟に気が短い職人気質のハンクではなく、沸点が低くおっとりだが仕事は堅実でオタク気質のマイクを育て手につける。

 

普段なら、結果的に数日延びてボーナスは逃しても、なんとかこなせるメンツだった。それで八方収まるはずだった。
… … ここが呪われた廃墟でさえなければ。
そもそもこの広大な敷地にこの人数では、素人目にも厳しいことは明らかだし、ハンクが言うように”アスベストの除去”という危険だが払いがいい汚れ仕事は、皮肉なことにがんばってこなせばこなすほど体は蝕まれ、尽きる時期も早まる未来の無い仕事ですから。
ちなみにハンクの代打要員クレイグは、いかにもな風体で登場し見事に巻き込まれます。

 

またこういった現場では、それらしき不可思議現象も確かにあるようで。
実話系でも造成地から大量の人骨が出る、機械が度々故障する、事故が続いて欠員が出るなどをよく見かけますが、実際起これば怖いより迷惑なのが本音なのかもしれません。

 

また特典映像では、ある人物が全面カットされた事が明かされています。
確かにこの結末なら煩雑さが減りはするんですが、そのための伏線が残っているため(予告にもその一部が残されています)一部の整合性を失わせてるような気も。
また何度見ても最後の一文は蛇足に思えてなりません。カットされた人物も凄まじくがんばってたのに非常に残念です。

 

未だ男性主権の我が国においては今なお亭主関白とDVの線引きすら曖昧ですが、本作の狂気の引き金は「妻を殴った事」。
十数年前の初見時には、ゴードンの告白を聞いたフィルがあまりにも動揺するのがちょっと理解できなかったのですが、今ならとても納得できるし、アメリカでは本作が公開された20余年前には既に問題とされていた事が、果たして現代日本の人々にどう映るのかも興味深い所です。

 

このブラッド・アンダーソン監督、TVドラマで活躍している方のようで、本作ではTV的コンプライアンスが頑なに守られてるんですが、3年後の「マシニスト」ではかなり割り切っているので、本作ではヌルい!と感じた方には、そちらも間違いなくおススメです。

 

 

■ 合わせておススメ

 

1980年公開。スティーブン・キングの初期長編小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した不朽のトラウマ作。冬は豪雪に閉ざされる山間部の最高級ホテル”展望ホテル”の冬季管理人となった一家が陥る狂気とは。40年以上前の作品なのに今も色褪せない恐怖と映像センスはもちろん圧倒的ですが、完全主義である監督の数百にも及ぶリテイクは伝説級で、張り詰めた撮影現場を捉えたメイキング、滂沱の涙で監督への畏敬の念を語る俳優、また王の如く振る舞う子役へのインタビュー等々も必見で、正直この舞台裏が一番怖ろしい。既に様々なバージョンが出ていますがメイキング付が絶対おススメ。体の芯から震えあがる事うけあいです。

 

2004年公開。今作と同じブラッド・アンダーソン監督によるサスペンス・ホラー。主人公は地方の工場に勤務する機械工(マシニストクリスチャン・ベール)。不眠症のため骸骨のように痩せこけ、勤務が終わると薄暗い独り暮らしのアパートに戻り、茫洋と眠れぬ夜をやり過ごすのが日課です。ところがある日、冷蔵庫の扉に奇妙な記号を見つけ…。狂気と幻想、精神と肉欲、そして苦悩と安寧。公開当時、主演のクリスチャン・ベールの凄まじい減量による役作りが話題となった作品ですが、なにより陰鬱でシュールな映像、妄想と現実の狭間に現れるファムファタール的な女たち等々見どころ満載なサイコ・サスペンスとして秀逸な逸品。

 

1980年公開。豪華客船の海難事故で生き残った船長ら乗組員が、海上を流離っていた古い大型船を発見して乗り込むが、中は無人で古く錆びついており怪異が頻発、やがてナチの拷問船だったと判明。それでなくとも冒頭から居丈高で、前半ずっと意識不明で使い物にならなかった船長(ジョージ・ケネディ)がナチの亡霊に取り憑かれて凄まじい事に。この船は高慢な人間の魂を蝕み、船を更なる贄の元に誘わせる。かつては昼ローでもたびたびかかったB級ヒット作で、本作での金貨のくだりなどはそのオマージュと捉えて差し支えないかと。
悪霊やゾンビや腐乱死体は出ませんが、重いエンジン部分が凄まじい音を立てて復活したり、何トンもの荷物を吊りあげる巨大なフックが死の振り子のように襲いかかってきたり。またなにより船そのものが恐ろしいんですよ。旧制ドイツの軍用貨物船?真っ黒で武骨で圧倒的で冒頭から凄まじい圧をかけてくる。スピルバーグ監督の「激突!」の大型トラックが悪魔的大型車代表ならこちらは大型船舶代表。船影だけでもゾッとするし、巨大重機や船舶マニア好みの倒錯的な魅力を醸しているかと。

 

1980年公開。NYのゲイストリートで発生した連続殺人事件を追う潜入捜査官(アル・パチーノ)が次第に心を蝕まれて行く闇を描いた問題作。「エクソシスト」のウィリアム・フリードキン監督×名優アル・パチーノが描くリアリティは様々な物議を醸し、それでなくとも当時死人が出るほどの激しい差別を受けていたゲイコミュニティからは猛反発を食らい、恋人もいる若手捜査官だった主人公が潜入捜査によってゲイへと変容していく様があまりにリアルで在らぬ噂が立ったり、日本でも公開後LD化されただけで長年ソフト化されなかった伝説の作品です。
潜入先アパートで情報を得るため親しくなった隣人のゲイカップルとの揉め事や、小柄な体を鍛え上げゲイ好みの風体に寄れば寄るほど次第に彼女との距離が遠のくとか、なにより犯人のトラウマや心情の掘り下げ方がたまらないんですよ。結果主人公の行く末は…。というオチも含めて最高なんで、この系にアレルギーの無い方はぜひ一度お試しあれ。

 

2005年公開の韓国映画。クリスマスイブ。韓国の隊長(ソン・ガンホ)以下男性5人チームは、これまでソ連隊が1度成功、イギリス隊は遭難し行方不明になった未踏の地、南極の到達不能点を目指し決死の行軍を続けていた。隊長は高名な冒険家だが一度失敗しており、今回は資金も機材も最小限で、継続参加は副隊長のみ。主人公(ユ・ジテ)は隊長に憧れて入隊した探検初心者で素直に心躍らせていたが、なぜか副隊長は鬱々と心閉ざしメンバーも言葉を濁すばかり。そんな中、撮影係が隊長に忍び寄るナニカを目撃。直後に体調を崩すが…。
”南極に潜む魔”=過酷な状況下での心の闇を描いたホラー・アドベンチャー。その魔に取り憑かれるのは誰か、とり殺されるのは誰か。この隊には死にたい者と生きたい者がいる。
ヘンゼルとグレーテル」(2007年 監督脚本)や「グエムル-韓江の怪物-」の次男を売る電話会社社員役が印象的だったイム・ピルソン監督の初の劇場用長編作で、壮大なテーマ曲は川井憲次。隊長役のソン・ガンホ、「オールド・ボーイ」(2003年)のユ・ジテと紅一点のカン・ヘギョン、韓国屈指のバイプレーヤー=ユン・ジェムンやパク・ヒスンなど個性派揃いなのも嬉しいところ。「パラサイト半地下の家族」(2019年)等々の人間味溢れるキャラでご存じの方も多いと思いますが、このガンホ氏は黒そして冷血冷酷。そんな彼を見てみたいという方にも間違いなくおススメです。