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モキュメンタリー沼 第1章2節 「信じるか信じないかはあなた次第」前提の『ほんと』

ほん呪13「前触れ」より

「ほんとにあった!呪いのビデオ」というOVがある。
それまで静止画だった心霊写真が「奇跡体験!アンビリーバボー」や「USO?!ジャパン」をきっかけに動画に移行し、TVでは心霊映像や超能力、都市伝説、UFOやUMAなどの特番が度々流れ、宜保愛子氏始め霊能者らが跋扈した1999年。
発刊から徐々にビデオ屋のホラー棚を侵食、2003年にはビデオからDVDへ、同時にビデオ巻をリマスターDVD化し、2019年には20周年記念イベントを開催、2023年7月にはついに100巻が劇場公開され未だ走り続けている大長寿シリーズである。
その間「読者投稿」or「スタッフが直に関わった事象」という体は揺らがず、ネットには常にその真偽を求める輩がうろつき、後年メジャーとなった元スタッフらも、その真偽に関してだけは頑なに口を閉ざしている。
かの昔 チョコボールのエンゼルマークで当たるおもちゃの缶詰ですら(当たり確率は0.2~3%だとか)各学校に数人はいたのに、これだけ見て見てちゃんだらけになった今もなお「ほん呪に投稿採用されて取材されちゃってさ~〇巻見てな!」という輩は見た事無いし、いたとしても不信感しかないw
ところが既巻には、投稿常連やヘビーユーザーが厳然と存在し、ある者はスタッフに起用されある者はその数奇な運命が連作にされたりする不可解。
長年気分で借りていたため、監督やスタッフの特性関連性などがあやふやだったが、幸運にも既刊のほとんどを検証する機会に恵まれ、ある結論に至った。「これ (ほぼ)モキュじゃね?」と(…長かったなぁ…遠い目)。
ただこれはあくまでも私感で何の確証も無いので、これまで「本当に呪われor祟られて死んだor失踪したor長期入院している」方々には申し訳ないが、真偽はさておきとりあえずモキュメンタリー目線で語らせて頂こうと決意した次第である。
第1弾は「これだけは絶対おススメしたい」厳選集。

 

①ドキュメンタリー系 「ほんとにあった!呪いのビデオ」黎明編

 

実は当時、海外では特殊メイクやSFXホラーが大流行、日本でもオカルトブームの真っ只中のスタートだったため、シリーズの目的はその真偽の検証であり、結果「偽物だとは断じがたい」=「ホンモノ」だと立証するスタイルだった。
後年数々の長編映画を手がけ、現在もナレーションを務める中村義洋監督に落ち着くまでは試行錯誤の繰り返しで、中には芝居みを隠しもしないモノや、さんざ気を持たせた挙句、加工丸出し映像を見せられ心折れそうになったりもしたが、真偽はさておき取材上の揉め事やエピソードの怖さや面白さがまずありきとまで達観したのが、当方含めこのシリーズの根強いファンといっても過言ではない。
またこの時期、動画のほとんどはVHSかβのビデオ映像だが、8㎜やHi8、音声テープや古びた写真や器物(置物や人形等)など様々で、地上波の放送終了後の砂嵐の異変はバリエが豊富で、カセットの送りムラやエラーノイズも滋味深く、倫理や人道上ギリギリの作品も多く見受けられる。

 

●「13巻」-「前触れ…」

シュールに人間の内面を抉る坂本一雪監督の作品。収録作は9本。
「前触れ…」は、高層団地の上階に住む投稿者が夜間、自宅窓から撮影した不可思議な映像のエピだが、撮影翌日、その団地内で女子高生の投身自殺があり騒ぎになったのだとか。取材を進めるうち、屋上階に設置された共有のコインランドリーで自殺直前の彼女を見たという住人が現れ、話を聞く事に。ちなみに屋上に出る扉は常に固く施錠されていて外には出られない。
彼女は事件の数時間前からそのランドリー脇の休憩室にぽつんと座っていて、洗濯をしに行った住人は開始と終了時の合せて2度、彼女を目撃したものの声をかけずにいたところ、彼女はふいに洗濯室にいた彼の背後をすり抜け「あ、来た」と呟き、その奥にある換気窓のはすかいを抜けて屋上に出て、その数時間後に飛び降りたと。
問題映像は夜間、眼下に広がるビル群の上に、白いジンジャーマンのような人型が何体も浮遊しているモノだったが、彼女がなぜ長時間1人でそこにいたのか、人型のソレは彼女を”迎え”に来たモノだったのかも謎のままという不可思議で寂寞とした余韻を残す作品。
彼女にはソレが一体何に見えたのか。取材でにおわせているように宇宙人や死神なのか、はたまた亡くなった優しい身内だったのか…。
ちなみにこの”コインランドリー”とは、2台ほど設置された旧式でコイン式の床置き型一槽式洗濯機を住民で共有する無人洗濯場の事。
また”浮遊する人型”はアップになるとかなり立体感もあり”ヒト”にも見えるが、当時は”フライング・ヒューマノイド”というワードすらなく、シリーズでもこの1本に限った事象である事も特筆しておきたい。

 

●「15巻」-「事故」「『責任…』」「ニューロシス」

同坂本一雪監督で、ロンゲに黒縁メガネヘビースモーカーの名物演出補藤屋敷氏の最後の参加作品。収録作は9本。
ツカミの「事故」は、投稿者の女性と友人が事故が多発する道路と知らずに踏み入れたその瞬間、偶然撮影中だった友人の方が、車に複数回撥ねられる様子が酷すぎて。問題映像そのものより、青天の昼間ののほほんとした公園散歩で始まるこの映像が、一転地獄絵図に変わる瞬間の目撃感たるや。思い出すたび良心の呵責に苛まされる作品。
「『責任…』」は、山奥の廃社員寮に侵入した男性2名のうち、強引に誘ってはしゃいでいたはずの先輩の言葉の中に「…責任」という呟きが混ざりだすが、当人には言った覚えも無く意味も解らないまま、やがて浮遊する不気味な女が階段を下りてくる画が恐ろしすぎて、思わず無事を祈りたくなる1本。また冒頭、名物演出補巨漢の横田直幸氏と藤屋敷氏による現地調査のてんやわんやもおもしろい。
「ニューロシス」は神経症を意味する用語だそう。投稿者がとある廃遊園地の打ち捨てられたミラーハウスを撮影するうち、どこからともなく狂乱する女の怒号と幼い子供の泣き声が聞こえ内部に響き渡るというモノ。それは虐待のようでもあり、藤屋敷氏は「虐待は小さい頃僕もやられました…記憶が蘇りますねぇ…いやですねぇ」というコメントを最後にシリーズを去る事に。

 

●「19巻」-「着信」

2005年の16巻~21巻、10年後の2017年の71巻~90巻と2度シリーズを担当した福田陽平監督による、エンタメ性と分りやすさの時代。不気味な脅迫文で始まる”黒狐”エピの不定期連作などユーザーを惹きつける引力がハンパない作品群の1本。
とある芸能事務所で、霊感有りの女性タレントの心霊番組のロケ中、留守電に残された不気味なメッセージの謎を追う。
霊視→現地調査となる前後編のエピで、スタッフが探し当てたのは10年前の交通事故。彼女は忘れられる寂しさから霊障が起きているようだと霊視、近隣住民は「何年かは身内らしき人が花が供えに来たが最近は見ない」と証言。事故ったのはその近所では見かけない赤の他人の男女が乗った車で少女のみ死亡しているそうだ。
留守電の音声で、猫の鳴き声のような曰く”チューニング”の後、少女のか細いすすり泣くような声で「帰りたい…」…「間違ったよぉ…」と聞こえる。少女が一体何を「間違った」のか、生き延びた男がその後どうなったのか、妙に後ろ髪を引かれる作品である。

 

●「22巻」-「監禁」

2006年の22巻~2011年の41巻までを担当した児玉和土監督による激動の時代。心霊動画の紹介というより個性的な演出補を多数起用し、偶発性とそのリアクションを楽しむ作品が多い。演出補にはその後シリーズをけん引した岩澤宏樹氏、菊池宣秀氏、川居尚美氏や地道な努力家森澤透馬氏、数々の技能を持つ阿草祐巳氏等々が名を連ねている。
「監禁」は、見知らぬ他人のゴミを見るのが趣味という投稿者が持ち込んだソレらしきモノが映り込んだビデオテープ。それはそのテープが捨てられていたアパートの一室に若い女性が”監禁”されている(風の)映像で、投稿者は明らかな”事件”で女性を救出したいが、己の”ゴミ漁り”という所業から通報もできず困り果てて投稿したのだそう。
そもそも設定からして無謀だし、映像の部屋は薄暗いしおよそ若い女性が好む雰囲気でこそないが、女性は今でいうメンヘラ風で監禁というより引きこもりっぽい佇まいで、ベッドに横になったり髪を整えたりと気ままに過ごしている。
スタッフはその投稿者による妄想&盗撮映像では?という疑念を抱きつつも突撃取材を試みるが、ドスの利いた声で応対に出たのは明らかにその筋の人物で、凄まれ怒鳴りつけられ、スタッフ一同ほうほうの体で逃げ出す結果に。
問題部分はそこそこ不気味で、その部屋を常時監視していた投稿者によれば間もなく空き部屋になったのだとか。つまり二重三重のタブーに抵触してるため断定はできないが…というオチが怖いし見事過ぎて、凄まじく印象的な作品となった。

 

 

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当方ビデオ時代からのファンなので、制作会社推しのB~Z級の怪作や韓流ドラマ等々の予告編、チャプターや冒頭の警告テロップのパターンや凡ミス探し、映像には登場しない製作陣、報奨金額の編纂等々の徹底チェックが可能な盤こそがおススメかと。信じるか信じないかはあなた次第だが。