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「家」(1976年)  ”家”そのものが怖い 家モノホラーの元祖

 

 

■ 70年代夏、米郊外の豪邸にバカンスにやってきた親子が”家”に取り込まれる『家モノホラー』の元祖。当時は頻繁にTV放映されラストシーンがトラウマと評判になった。
■ 製作/監督/脚本=「血の唇」(1970年)、「恐怖と戦慄の美女」(1975年のTVM)のダン・カーティス
■ 原作=ロバート・マラスコのホラー小説「家」(原題「Burnt Offerings(=神に贄を捧げる儀式、燔祭)」)
■ 出演=ベン(オリヴァー・リード)、マリアン(カレン・ブラック)、デイビッド(リー・H・モントゴメリー/子役)、伯母エリザベス(ベティ・デイヴィス)、家主/兄アーノルド(バージェス・メレディス)、妹ロズ(アイリーン・ヘッカート)、霊柩車の運転手(アンソニー・ジェームス)など

 

■ あらすじ
ロルフ一家が夏季休暇を少々贅沢に過ごそうと決めたのは、郊外の広々とした芝生の庭とプール付きの白亜の大豪邸。
気難しそうな家主の老兄妹アーノルド・アラダイスとロズは「旅行中、最上階に残していく老母の世話をしてくれるなら格安でいいし、大切なこの家を愛してくれるなら」と半ば強引に契約し、早々に旅行に出てしまう。
その家は確かに豪邸だが、方々が劣化して故障し、温室の花も枯れ果てていた。
一家の夫ベンはボロ家と年寄りを体よく押し付けられたのでは?と疑うが、幼い息子デイビッドと同居の老伯母エリザベスは大喜び。
また妻のマリアンは、何より憧れの大豪邸と豪華な家具調度や銀食器に目を輝かせ、早速アラダイス夫人にも会いに行くが、なぜか夫人は姿を見せず、部屋は贅沢な調度と家族写真で埋め尽くされていた。
彼女は気にせず嬉々として掃除に明け暮れ、ついにはアラダイス夫人の部屋に入り浸るようになる。

 

数日後、デイビットの部屋でガス漏れ事故が発生、マリアンはそれをボケたエリザベスの仕業と決めつけて責めたため、それまで明るく元気だったエリザベスが体調を崩して一気に老け込む事に。
一方プールでは、ベンが豹変してデイビッドを溺死させかける事件が起こる。デイビッドは無事だったがマリアンは激怒してベンを責めたて、孤立した彼は、幼い頃のトラウマである霊柩車と無気味な運転手の幻覚を見るようになる。
また伯母も霊柩車の幻覚に怯えながら、朽ちるように体中の骨が砕けて死亡する。
その死に立ち会ったベンはようやく、誰かが傷ついた分、家が修復される法則に気づく。
彼は怯えて逃げようと言い出すが、マリアンはなぜか家とアラダイス夫人に拘り、動こうとしないのだ。
変事は頻発し温室には花が咲き乱れる一方、ベンは衰弱して怯え、デイビッドも傷だらけになるが、マリアンだけはなぜか美しくはつらつとして、家主のように家を賛美すらし始める。
そんなある夜、ついに家の外壁が崩れ落ち、メキメキと音を立てて自己修復を始めるが…。

 

■ 感想
本作で恐ろしいのは ”家” そのもので、「ヘルハウス」(1973年)と合せて、”魔が取り憑いついた家”モノホラーの元祖と言うべき作品です。
憧れの豪邸暮らしに労を惜しまず掃除に明け暮れ、銀食器を磨き上げ、性の合わない派手好きの老伯母をちゃっちゃと見捨てるマリアンには思わず共感しちゃうんですが、ラストショットはヒッチコックの「サイコ」ばりに怖ろしく、カレン・ブラックの名を世に知らしめた作品です。
若き日にはその美貌で名を馳せ、後年「何がジェーンに起こったか?」(1962年)等々の怪演で知られる名女優ベティ・デイヴィスによる伯母エリザベスも最高でした。
CGも無く特殊メイクだけが頼りだった当時、その卓越した演技だけで、短期間で急激に老け込み、腫れて落ち窪んだ眼をして卑屈にモゴモゴ喋り、身体中の骨が軋んでへし折れ絶命するエリザベスはまさにトラウマ級の仕上がりで、役どころとは言え、その場に意図せず立ち会ってしまったベンには同情を禁じ得ません。
そのベンを演じたのはロック・ミュージカル「Tommy/トミー」(1975年)、Dクローネンバーグ監督の「ザ・ブルード/怒りのメタファー」(1979年)等々の個性派俳優オリヴァー・リード、やんちゃな息子デイビッドを演じたのはマイケル・ジャクソンのテーマ曲で知られるネズミパニック映画「ベン」(1972年)の名子役リー・H・モントゴメリー。
家主のアーノルドはSスタローンの「ロッキー」始め若き日のAホプキンスの腹話術師と渡り合うエージェントを演じた「マジック」(1978年)等々ホラーにも多数出演している名優バージェス・メレディス、作品のアイコンとも言える霊柩車の不気味な運転手を演じたのは「夜の大捜査線」(1967年)のアンソニー・ジェームスという、錚々たるメンバーにも着目して頂きたいところ。
ちなみにSF・ホラー・ファンタジーに捧げられる第4回サターン賞では監督賞(ダン・カーティス)、助演女優賞(ベティ・デイヴィス)を受賞、保証付きの面白さです。

 

■ 合わせておススメ

 

(1973年/英米合作) オカルト&エロスの家モノホラー。”吠える巨人”エミリッヒ・ベラスコの巨大な廃豪邸。そこで起こる怪異の謎を解き明かそうと、これまで数々の霊能者や研究者が挑んだが、ぼぼ全員狂うか死亡したと噂される『地獄の家』。
挑戦するのは「超常現象は全て科学で解決できる」と豪語する超常現象の権威Dr.バレット(クライヴ・レヴィル)とその貞淑な妻アン(ゲイル・ハニカット)、若き女性霊媒師フローレンス(パメラ・フランクリン)、前回の挑戦の唯一の生存者ベン(ロディ・マクドウォール)の4名。
画は霊能者フローレンス。真面目で身持ちが固い淑女だがどこか子供じみたとこが難点で、Drバレットの無能力の妻アンと意図せず張り合う形に。
これは今も変わらないだろうけど、若い女性霊能者というだけでバレットに小バカにされてて、そのため功を焦って降霊術を行い、ベラスコの性質を読み違えてつけ入られ酷い目に。
そもそもベラスコが”残酷で好色なあらゆる悪行を重ねた大男”というだけあって、女性メンバーがヤバい事になるとこが、昭和男子らのスケベ心を掴んで離さない不朽の家ホラー。
後年「心霊現象は電磁波が原因」説が未だ囁かれ続けているのも多分ここが発祥かと。確かにツッコミどこも多くエロスもあるけど、ベラスコ邸の豪華なゴチック建築、その広間に据えられた全く似つかわしくない現象阻止マシン”リバーサー”等々も異様で、ゴア度もそこそこ。TV放映されるたびもちろんビビったし、怖いですってマジでガチで。

 

シリーズというか亜流の多さでは他の追随を許さない”事故物件モノ”の元祖。物語は大概NYに実在する一家惨殺事件があった家”アミティビル”に、両親と数人の子が入居するところから始まり怪異が頻発、長男が”命ずる声”を聞き一家惨殺するというストーリー。壁から大量流血、長男が狂気に取り憑かれ、幼い兄弟含め家族を惨殺するのは当時としてはショッキングで、TVでよく放映されてた当時には、それこそがかつての殺戮の再現だなどと気づきもしないまま、ただただビビったトラウマ作。
しかしながら、ネタも出尽くした近年作「悪魔の棲む家REBORN」(2018年)も個人的にはおもろかったですけどね。今更壁から大量流血!とかは無いし現象もフルCGでファンタジックなんですが、横柄な父親の圧で長男のストレスが臨界点を越えるとことか、最終的に「殺さなきゃ」「”殺されなきゃ”」って思ってく心理戦がなかなかな良作だったかと。

 

(1980年/英米合作)。みんな大好きスティーヴン・キング原作/スタンリー・キューブリック監督の”魔が取り憑いたホテル”が舞台の名作。
冬は豪雪に閉ざされる森林地帯にある老舗ホテル”展望ホテル”の冬季管理人としてやってきた一家の父親ジャック(ジャック・ニコルソン) が”ホテルに棲む悪霊”に取り憑かれて発狂、妻と幼い息子を殺害しようと追い回すが…というストーリー。
怖いんすよ、始めっから何もかも。原作はキングの初期作なんですが、父親ジャックは売れない小説家で、副業無しでは食えないのに副業すれば書く時間が無いという負のスラロームに入ってて、この管理人になる直前、酔っぱらって荒れるうち、息子の腕を捻挫させてるんすよね。DVという言葉が無い時代、そんな夫に妻ウェンディ(シェリー・デュヴァル)はそもそも空気読めない性質なのに異常に気を使い、息子のダニー(ダニー・ロイド)は委縮し『空想の友だち』(これこそが彼の特殊能力”シャイニング”なんですが)としか口かきけず一人遊びに興じている。もうそこだけで怖い。ジャックがいつキレるのか、DVが始まるのか。そこを悪霊に付け込まれ、そそのかされる…。
さすが名匠キューブリックというべきか、怖さも画も不気味さもスペクタクルも超一流で、現在も人気度は高く様々なバージョンがあるけど、おススメなのはメイキングと俳優インタビューが収録されている盤(リンク先は適当なんで要注意)。子役のダニー以外の主要俳優が滂沱の涙でキューブリックを礼賛する異常なインタビューなど、本編よりよっぽど怖いんで。

 

(1977年/日)。「転校生」等尾道三部作で知られる大林宣彦監督の初劇場長編作でアイドル映画の元祖。キッチュで不気味可愛い画面を後年大女優となる少女らが駆け回るホラー・コメディ。
父親の再婚で心揺れるJKオシャレ(池上季実子)は仲良し女子たち数人で、母方の親戚のおばちゃま(南田洋子)の田舎家に泊まりに行く事に。おばちゃまは何年経っても素敵なままで大はしゃぎの少女らを歓待するが…。
なによりあだ名で呼び合う少女らと、和洋折衷のアンティークな田舎家に素敵なおばちゃまって世界観すよ。確かに若手女優らはキュートだけど、なにより南田洋子、鰐淵晴子の気品ある佇まいが最高過ぎて。それでいてゴア度高めで、転がる生首!千切れ飛ぶ手足!人喰いピアノ!…と字ズラはスゴイがなにせ手作りなんで、近年の白石晃士監督の「コワすぎ!」の”異世界でぐるぐる”映像に耐性があれば十分イケるヘンテコ映画。まーそんな時代だったっつー話のタネにお試しあれ。

 

(1962年/米)。かつて華やかな子役時代を送った妹ジェーン(ベティ・デイヴィス)と、同じく子役から実力派女優にのし上がった姉ブランチ(ジョーン・クロフォード)は事故により引退して落ちぶれ、老境に差し掛かった現在、ジェーンが歩行困難なブランチの世話をしているが、その行動はお茶目の域をはるかに越える異常さで…。
冒頭からどう見てもジェーン(Bデイヴィス)がヤバい。色々経緯もあったようだがともかくジェーンがヤバいしブランチ逃げて~ってなるんだが…。酷過ぎるオチに愕然とさせられるし個人的には号泣レベだったサスペンス。
「家」の伯母役も合せてこのベティ・デイヴィス、クセになることウケあいです。

 

ダン・カーティス監督による1975年のTVMで、カレン・ブラック主演の3本立てドラマ。中でも高さ50㎝ほどのブードゥー人形=凶暴で獰猛なズーニー人形とのガチバトル第3話「アメリア」は傑作で、「チャイルドプレイ」のチャッキーや「グレムリン」の原型とも言われています。カレンて一見個性的に見えるけど、スタイルも佇まいも70年代のハリウッド女優としては最高の美人枠なんすよ。邦画で言えば高橋惠子の「DOOR」(1988年)。あのリーマンを50㎝のズーニー人形に差し替えたカンジの丁々発止が繰り広げられるんでヤバ度怖度はガチ。どちらもちょっと笑っちゃうけど。