あやし野ビデオ館

怖い映画をご紹介しています

クトゥルフ的 ラヴクラフト的 異世界モノへの誘い Ⅱ

「人喰いトンネル」と合せておススメしようとあれこれ考えてくうち、長くなっちゃったので別立て第2弾。
壁の向こうは異世界異世界トリップ、異世界の拡大・浸食、異世界召喚… 異世界系かなり好きなんすね。自覚無かったけど。
何の前触れも無くズルッと引き込まれる何かがズレてる奇妙な世界。クトゥルフラヴクラフト異世界モノにようこそ。

 

 

 

(2007年/香港/タイ)「The Eye」のパンブラザーズによる”地獄巡り”主演は同じくアンジェリカ・リー。
新人女流作家ディンイン(アンジェリカ・リー)が「次回作はホラー『鬼域』(異界/霊界/あの世)」と勝手に決められスランプになり、異界へと迷い込む話。
何より推したいのがその荒唐無稽で予測不能なイマジネーションの素晴らしさ。特撮がまず圧倒的で、文句なく凄い。
怪異は彼女の書斎から始まり、部屋を出た瞬間から知ってるのに知らない場所にスリップ。
かつての九龍城のような不気味なアパート、その迷路のような巨大廃墟から僅かに覗く空には巨大なゴンドラ。廃遊園地、うずたかく積み上げられた本の世界、そして死人がうろつく賽の河原のような殺伐とした荒地へと小気味いいくらいのテンポで奈落の底に^^;
ちなみにこの間、その高層廃アパートから無数の人間がぼたぼた落ちてくる(飛び降り)シーンは、シャマラン監督の「ハプニング」(2008年)以前で、怖さ不気味さもこちらの方が上。またみんな大好き巨大オモチャシーンも存分に楽しめます。
原題は「RE-CYCLE 鬼域」でテーマは「忘れ去られたモノの世界」。果たして彼女が何を忘れ、何を捨てて来たのか。なぜその世界へと迷い込んだのか…。今なお劇場で見なかった事を後悔している壮大なホラー・ファンタジーです。
邦訳版はデラックス版まで、リマスター版は英語Ver.のみで、邦訳版のリマスター特別版BDを何年も心待ちにしている名作です。

 

(1975年/オーストラリア)19世紀末。町から隔絶された全寮制の花嫁学校。生徒は良家の子女ばかりで詩や芸術、学問、礼儀作法や立ち居振る舞い、ドレスの着付けなどを厳しく仕込まれる日々を送っているが、その日はバレンタインデーで岩山へのピクニックに行く事に。
ところがその岩山の頂上付近で、校内随一の美少女ミランダ他2名の生徒と引率のハイミス教師が失踪。彼女らと同行しその後狂乱して戻った生徒によれば「彼女らは岩山に消えた、教師は”はしたない恰好”で岩山に登って行った」と。
果たして彼女らはどこに消えたのか…。
何よりボッティチェリの名画のような幻想的で美しい画が魅力のファンタジーSF。ただ描かれている問題はまさしく性差別や格差の闇であり、その狭間に存在した彼女らがなぜ”消えた”のか、どこに向かったのか、向かいたかったのか、その不自由を感じた経験があるなら泣きたくなるほど切ない作品かと。
美少女3名にもそれぞれ事情や闇があり、脇を固める男性陣、良家の子女ながらおデブで下世話な子、貧民の孤児だが引き取られてお荷物扱いされ、寮生や教師から虐げられている小公女のような子、そして異なる立場の教師やメイド、下男等々にもそれぞれ事情がある。
美少女ミランダ役アン・ランバートの人間離れした美貌や画の美しさから、男性にも人気の作品ですが、男女平等が声高に謳われる今だからこそ、特に女性におススメしたい作品かと。
以前NHKで放映されネトフリ配信などもある海外ドラマ「アンという名の少女」が刺さった方には間違いなく刺さります。ちなみにオリジナル版をカットした短いバージョンがディレクターズカット版なのでご注意を。ちなみに当方のおススメは片付けは悪いけどオリジナル版。

 

(2022年/日)2ch発祥の都市伝説『きさらぎ駅』の映画化作品。監督は「真・鮫島事件」「リゾートバイト」の永江二朗。
なんにせよ2ch発祥なので諸説あるんで「知ってるのと違う!」ってツッコミは無効、同じく都市伝説「ひとりかくれんぼ」や「異世界へ行く方法」と同じくある行動をすると辿り着けるのが「きさらぎ駅」という名の異世界だというのが基本。
大学生の春奈(恒松祐里)はそれを卒論のテーマとし、実際に体験すべく唯一の生還者と噂される葉山純子(佐藤江梨子)に事情を聞き実行する。
実験は成功し、現実とはいささかズレてて怖ろしい奇妙な世界に辿り着くが、その世界にはそれぞれ事情を抱えた男女5人がいて、現実世界に戻ろうと必死に足掻くが、異界は容赦なく彼らを一人また一人と飲み込み…。
ともかくおっさんが怖いw 初期メンバーの飲んべも、途中「線路を歩いたら危ないよぉ」と注意してくるのも、車に乗せてくるのもw 地雷が分からず、何やらかすのか読めないしでもなんか女は好きそうだし超不満そうだし^^;
体験者の謎女性純子役のサトエリ白石晃士監督の「口裂け女」見てるので、やっぱり地雷が分らず何考えてるのか最後の最後まで読めない。
その怖さ。邦画のこの系は苦手な方も多いかもだけど、これはSFみもあり色んな意味で怖いのでぜひお試しあれ。

 

(2017年/日) 廃工場に集められた6人の男女による怪談会が異界を呼び覚ます Jホラーの名匠高橋洋監督作品。
怖ろしいのは『人の死に立ち会った』というメンバー(韓英恵、巴山祐樹、長宗我部陽子、高木公佑、伊藤洋三郎、南谷朝子)の語り(台詞)と僅かな仕草、会場に置かれたオープンリール等のノイズ、話のイメージへのスリップ感、唐突な昼夜転換などの仕掛けで、稲川氏始め(講談や百物語イベントベースの)エンタメ怪談とは完全に別物。
中でも由紀子(韓英恵)の『生きながら焼かれていく自分』の話が怖ろしく、指で「ととととと…」とするシーンは悪夢級。
高橋監督作品には、脚本/監修だけなら2000年のJホラーあたりからDNAに刷り込まれるほど見ているし大好きなんですが、いざ監督作となるとイマイチピンと来ない作品が多くて。
Jホラーシアターのトリを飾った「恐怖」(2010年)や最近見た「ザ・ミソジニー」(2022年)も怖いしわかるんだけど思ってたのと違う感に苛まれてしまい^^; 特にほぼほぼクライマックスで炸裂する高橋監督節に「あ、すいません、ちょっと解りません」的な引き方をしてしまって^^;
ただ今作は怖い。間違いなく怖い。多分最後に炸裂するであろう高橋監督爆弾がどこで爆発したのか、知らぬ間にスゲー修羅場に呆然と突っ立ってて「ああ…もうダメなんだな 死ぬな」って思いながら唱和しちゃってる自分がいる。
ボリシェヴィキ』とは「レーニンが率いた革命党派」(公式より)だそうですが、不勉強ゆえに完全イミフで、クライマックスの「ダー・スメルチ!(そうだ、死だ!)」のシュプレヒコールあたりでなんとなく納得というか体感^^;
主宰者というか首謀者がその”儀式”によって、一体何を呼び出そうとしてたのか。高橋洋監督、黒沢清監督らのファン及びそういうコトに詳しい方ならより楽しめる作品なのではと。

 

(2004年/米) 南北戦争時代 広大なトウモロコシ畑の廃屋敷に逃げ込んだ男女6人の強盗団が得体のしれない怪物に襲われるオカルトホラー。主人公ウィリアムを「E.T.」のエリオット少年役だったヘンリー・トーマス、狡賢く暗躍するクライドをWフリードキン監督の「BUG/バグ」(2006年)のピーター役マイケル・シャノンが演じています。
田舎町の銀行を襲撃し、子供を含む住民の大半を殺害した彼らは、広大な立ち枯れのトウモロコシ畑に囲まれた豪農の廃屋敷に逃げ込むが、畑には死体入りの案山子や皮を剥がれたような不気味な生物がうろつき、屋内には何かの気配がして…。
その”皮を剥がれたような生物”ってのが1種類じゃないんすよ。ヒトか獣か分らない獰猛なのやら、鳥っぽいのやらが襲ってきたり死んでたり。
けどメンバーは兵隊崩れのヤサぐれなんで捕まったら間違いなく縛り首だし、紅一点のアナベルやぶんどった金貨の山や人種差別が火種となり、互いに猜疑心に囚われる一方、不気味な現象が起き、大嵐が来て、出るに出られない密室状態に。
この異界、敵が見えないんすよ。様々な暗喩や伏線はあるのに回収されない。けど投げっ放しではないので感想や考察は多分百人百様。
悪人なので懲らしめは分かるが、何が原因でそうなってるのか、どんなルールがあるのか、果たして回避できるのか…。ようやく夜が明け全てが終わったかと思われた後のまさかの結末にも愕然とさせられます。

 

 

「朝、目覚めたら異世界だった」「起きたら巨大な昆虫(もしくは美少女もしくは大富豪もしくはヒーローry)になってた」とか、そういう異世界じゃないんすよ。何もかも普段通りなのに何かが違うそんな異世界
あ、そうそうTVMですが「スティーヴン・キングの8つの悪夢」(2006年/米)もおもろかった。名優ウィリアム・ハートがちっちゃいミリタリー人形と壮絶バトルしたり、主人公がキングの有名なクトゥルフ異世界クラウチエンド』に迷い込んだり。
でやっぱり王道は「トワイライトゾーン」や「世にも奇妙な物語」ですかね。なんだかんだと話は尽きないですが、また今度。
異世界いいわぁ、そういうとこに一度は私も迷い込んでみ